自宅で手軽にできるヘアカラーは、気分転換にもなって楽しいですよね。
ですがその一方で、こんな経験はありませんか?
「カラーの最中、頭皮がなんだかヒリヒリする…」
「染めた次の日から、頭がかゆくて我慢できない!」
「フケみたいなものや、赤いブツブツができてしまった…」
いつも使っている製品なのに急にトラブルが起きると、「もうヘアカラーはできないのかな?」と不安になってしまいますよね。
そのかゆみの原因をきちんと知って、正しい対策をとれば、これからも安全にヘアカラーを楽しむことはできるんです。
この記事では、自宅ヘアカラーで頭皮が痒くなるのはなぜか、その理由から、今すぐできる対処法、未来のトラブルを防ぐための方法まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。
あなたのヘアカラーに対する不安が、この記事を読み終わるころには、きっと安心に変わっているはずですよ。
なぜ?ヘアカラーで頭皮が痒くなる2つの主な原因

自宅でヘアカラーをした後のかゆみ、実は多くの方が経験しています。
その背景には、大きく分けて2つの原因があると考えられているんです。
一つは「刺激」、もう一つは「アレルギー」によるもの。
この二つは、似ているようでメカニズムが違うので、対処法も変わってきます。
ご自身の症状がどちらに近いか、一緒に見ていきましょう。
ヒリヒリ、チクチク…薬剤の「刺激」が原因かも?
一つ目の原因は、「刺激性接触皮膚炎」と呼ばれるものです。
これはアレルギーとは違って、ヘアカラー剤に含まれる化学物質が、頭皮に直接的な「刺激」を与えることで起こる反応のことです。
ヘアカラー剤には、髪に色を入れるためにキューティクルを開く「アルカリ剤」や、髪色を明るくする「過酸化水素」といった成分が使われています。
これらの成分は、キレイな髪色のためには欠かせないのですが、同時に頭皮を守っている皮脂を奪ってしまい、お肌のバリュー機能を弱めてしまうことがあるのです。
この「刺激」による反応は、かゆみというよりも、「ヒリヒリ」「チクチク」とした痛みや熱を感じることが多いのが特徴です。
反応が出るタイミングも早めで、薬剤を塗っている最中や、洗い流した直後に感じることがほとんど。
症状が出るのは薬剤が触れた部分だけで、洗い流せば1〜2日ほどで落ち着くことが多いです。
もともとお肌が敏感な方や、その日の体調によって頭皮がデリケートになっている時に起こりやすいと考えられています。
時間差でやってくる!「アレルギー」反応の可能性
二つ目の原因が、より注意が必要な「アレルギー性接触皮膚炎」です。
いわゆる「ヘアカラーアレルギー」と呼ばれるもので、特定の物質に対して体の免疫が「敵だ!」と過剰に反応してしまうことで起こります。
このアレルギーの主な原因物質として有名なのが、「パラフェニレンジアミン(PPD)」などの「ジアミン」と呼ばれる酸化染料です。
ジアミンは、白髪もしっかり染まる上に、濃い色をキレイに出せるので、市販されている多くのヘアカラー剤に使われています。
アレルギーの少し怖いところは、花粉症のように、ある日突然、発症することです。
体の中では、初めてジアミンに触れた時に「これは異物だ」と免疫細胞が記憶します。
これを「感作」と言います。
そして、記憶ができた後にもう一度ジアミンに触れると、免疫システムが過剰に反応。
激しいかゆみや赤み、腫れ、ひどい場合は水ぶくれといった症状を引き起こしてしまうのです。
このため、「何年も同じ製品で大丈夫だったのに、急にかぶれた」ということが起こるのですね。
一度アレルギーになってしまうと、基本的には生涯続くことが多く、次に同じ成分の製品を使うと、もっとひどい症状が出てしまう可能性が高いです。
症状が出るタイミングも特徴的で、染めた直後ではなく、24時間から72時間後、つまり翌日や2日後にピークがくることが多いのもポイントです。
かゆみは頭皮だけでなく、生え際や耳、首、ときには顔やまぶたにまで広がってしまうこともあります。
命に関わることも?知っておきたい「アナフィラキシー」と「蕁麻疹」
頻度はとてもまれですが、ヘアカラーのアレルギーで最も警戒したいのが「アナフィラキシー」です。
これは、染めてから数分〜30分以内に、全身の蕁麻疹や息苦しさ、めまいといった、命に関わる激しい症状が現れる反応です。
もし、このような症状が少しでも出た場合は、絶対に様子を見たりせず、すぐに救急車を呼ぶなど、医療機関を受診してください。
ヘアカラーで蕁麻疹が出た場合は、こうした重い反応のサインかもしれない、と覚えておくことが大切です。
ヘアカラーで痒くなったらどうすればいい?今すぐできる対処法

もし、ヘアカラー中やその後に、頭皮にかゆみや「おかしいな?」と感じることがあったら、どうしたら良いのでしょうか。
焦らずに、落ち着いて対処することが何より大切です。
まずは落ち着いて!すぐに薬剤を洗い流そう
薬剤を塗っている最中に、ヒリヒリ感やかゆみを感じた場合。
その時は、すぐにヘアカラーを中断して、ぬるま湯で薬剤をしっかりと洗い流してください。
ゴシゴシこすると頭皮を傷つけてしまうので、指の腹を使って優しく、時間をかけてすすぎましょう。
すでに染め終わった後にかゆみが出てきた場合は、まず患部を冷やしてみるのがおすすめです。
冷たいタオルや、タオルで巻いた保冷剤をそっと当てることで、炎症が少し和らぎ、かゆみを感じにくくなる効果が期待できますよ。
やってはいけない!「掻きむしる」ことの危険性
かゆい時に一番やってはいけないこと、それは「掻きむしる」ことです。
気持ちはとてもよく分かりますが、掻いてしまうと頭皮のバリア機能がもっと壊れてしまいます。
その結果、炎症が悪化したり、傷口からばい菌が入って、さらに別の皮膚トラブルを引き起こす原因にもなりかねません。
こんな症状が出たら、迷わず皮膚科へ
応急処置をしてもかゆみが治まらない。
日に日にかゆみが強くなっていく。
赤みや腫れ、水ぶくれなどの症状が見られる。
かゆみが顔や首など、頭皮以外の場所にも広がっている。
このような場合は、ご自身でなんとかしようとせず、できるだけ早く皮膚科を受診してください。
お医者さんであれば、症状を正しく診断して、炎症を抑える塗り薬やかゆみを止める飲み薬など、あなたに合ったお薬を処方してくれます。
もう繰り返さない!頭皮に負担のかからない安全なヘアカラー実践ガイド

一度つらい頭皮トラブルを経験すると、次のヘアカラーが少し怖くなってしまいますよね。
ですが、正しい知識を持って、手順を守れば、そのリスクはぐっと減らすことができます。
ここでは、頭皮に負担をかけずにヘアカラーを楽しむための、具体的な方法をご紹介しますね。
あなたの体を守る一番大事な約束「パッチテスト」
安全なヘアカラーのために、絶対に欠かせない一番重要なステップ。
それが「パッチテスト(皮膚アレルギー試験)」です。
これは、ヘアカラー剤を頭全体に塗る前に、ご自身がその製品にアレルギーを起こさないかを調べる、簡単な安全確認テストのことです。
「いつも使っている製品だから大丈夫」という気持ちは、ぐっとこらえてくださいね。
お話ししたように、アレルギーはある日突然やってくるものだからです。
ご自身の体を守るために、「ヘアカラーの前には、毎回必ずパッチテストをする」と心に決めておきましょう。
ただし、ここにはとても大事な注意点があります。
もし、今までに一度でもヘアカラーでかぶれた経験がある方は、アレルギーがすでに成立している可能性がとても高いです。
そのため、ジアミンという成分が入ったヘアカラー剤は、二度と使ってはいけません。
この場合、パッチテストをすること自体が、ひどいアレルギー反応を引き起こす危険な行為になってしまうので、絶対にやめてくださいね。
<正しいパッチテストの手順>
- タイミング: ヘアカラーをしようと思っている日時の、きっちり48時間前に行いましょう。アレルギー反応は遅れて出てくることが多いので、この時間が大切なのです。
- 準備: 実際に使うヘアカラー剤の1剤と2剤、綿棒、混ぜるための小さいお皿(金属製はNGです)を用意します。
- 混ぜて塗る: 説明書通りに1剤と2剤を少しだけ混ぜて、綿棒で腕の内側のきれいな皮膚に、10円玉くらいの大きさに薄く塗ります。
- そのまま待つ: 塗った場所は絆創膏などでフタをせず、自然に乾かします。濡らしたり、こすったりしないように注意して、48時間そのままの状態で待ちます。お風呂に入る時は、濡らさないように気をつけてくださいね。塗ってから30分後と、48時間後の2回、様子をチェックします。
- 結果を見る: 48時間経つまでの間に、塗った場所に赤みやかゆみ、腫れ、ブツブツなど、何かしらの異常が出た場合は、アレルギーのサインです。すぐに製品を洗い流して、そのヘアカラー剤を使うのはやめましょう。48時間経っても何も異常がなければ、安心して染めることができます。
染める前のひと工夫で頭皮をガード!
パッチテストをクリアしたら、いよいよヘアカラー当日です。
染める前に少しだけ工夫するだけで、頭皮への負担は大きく変わってきますよ。
まず、ヘアカラー直前のシャンプーは避けるのがおすすめです。
シャンプーしたての頭皮は、守ってくれるはずの皮脂が洗い流されて、とてもデリケートな状態だからです。
前日までにシャンプーを済ませておいて、適度な皮脂が頭皮をコーティングしている状態で染めるのがベストです。
次に、ワセリンや油性のクリームを生え際や耳の周りに塗っておきましょう。
おでこやこめかみ、耳、首すじなど、薬剤がつきやすい部分をあらかじめ保護しておくことで、刺激や色移りを防ぐことができます。
そして最後に、頭皮のコンディションをチェックしてください。
もし切り傷や湿疹などがある場合は、残念ですが今回はヘアカラーをお休みしましょう。
傷ついた皮膚に薬剤がしみると、とても痛いですし、症状を悪化させる原因になってしまいます。
「頭皮にベタ塗り」はNG!塗り方のコツ
自宅で染めるとき、根元までしっかり染めたいあまり、薬剤を頭皮にベタっとつけてしまいがちですよね。
ですが、これが刺激の大きな原因になってしまいます。
理想は、美容室でやってもらう時のように、頭皮に薬剤をつけず、髪の根元ギリギリから塗ること。
ご自身で完璧にやるのは難しいかもしれませんが、「できるだけ頭皮には直接つけないようにしよう」と意識するだけでも、刺激は全然違います。
髪をクリップなどで細かく分けて、ハケやコームを使い、髪の毛にだけ薬剤を乗せるようなイメージで、丁寧に塗ってみてください。
頭皮に優しいヘアカラー製品の選び方とは?

最近では、頭皮への負担を考えて作られた、色々なタイプのヘアカラー製品が出てきています。
「頭皮に負担のかからないヘアカラーって、どんなものがあるの?」というあなたの疑問にお答えしますね。
製品選びの具体的な選択肢を、一緒に見ていきましょう。
ジアミンアレルギーが心配なら「ノンジアミンカラー」
ジアミンアレルギーが心配な方が、まず検討したいのが「ノンジアミンカラー」です。
これは、アレルギーの原因になりやすい「パラフェニレンジアミン(PPD)」などの酸化染料を使わずに作られたヘアカラー剤のことです。
ですが、「ノンジアミン」という言葉だけで、すぐに安心するのは少し待ってください。
「ノンジアミン=絶対にアレルギーが起きない」というわけではないからです。
ジアミンの代わりに別の染料が使われていて、その成分に反応してしまう可能性もゼロではありません。
新しい製品を試す時は、ジアミンフリーの製品であっても、念のためにパッチテストをすることがすすめられています。
ダメージを抑えたいなら「カラートリートメント」「ヘアマニキュア」
頭皮への優しさを一番に考えるなら、「カラートリートメント」や「ヘアマニキュア」がとても良い選択肢になります。
カラートリートメントは、お風呂でシャンプーの後にトリートメント感覚で使える製品です。
ジアミンや過酸化水素は入っておらず、髪の表面に色を付着させることで染めていきます。
髪を明るくすることはできませんが、使うたびに少しずつ白髪が目立たなくなり、髪にツヤも与えてくれます。
頭皮や髪へのダメージがとても少ないので、お肌が敏感な方でも使いやすいのが嬉しいポイントです。
ヘアマニキュアは、酸性の染料で髪の表面をコーティングする方法です。
こちらもジアミンなどは入っておらず、髪を傷めることなく色とツヤを与えてくれます。
カラートリートメントよりは、一度でしっかり色が入る傾向があります。
頭皮につくと一時的に皮膚も染まってしまうことがあるので、塗るときは少し注意が必要ですね。
自然派の選択肢「ヘナ」を使うときの注意点
天然由来の選択肢として「ヘナ」があります。
ヘナは植物の葉を粉末にしたもので、100%天然のヘナであればジアミンは含まれていません。
ですが、注意したいのが「ブラックヘナ」と呼ばれるものです。
一部の製品には、色を黒くするために化学染料であるジアミンが混ぜられていることがあり、これがひどいアレルギーの原因になることがあります。
また、ヘナは基本的にオレンジ色に染まるので、色の調整が少し難しいという側面もあります。
「オーガニック=安全」とは限らない!成分表示をチェックしよう
「オーガニック」と聞くと、なんとなく髪や頭皮に優しそうなイメージがありますよね。
ですが、ヘアカラーの「オーガニック」には、はっきりとした定義がありません。
植物エキスが少し入っているだけで、「オーガニックカラー」と名乗っている製品も多いのが現状です。
中には、主成分としてジアミンをしっかり使っている製品もあります。
イメージだけで選ぶのではなくて、必ず製品の裏側にある全成分表示を自分の目で見て、「パラフェニレンジアミン」などの文字がないかを確認する習慣がとても大切ですよ。
不安な時は美容室に相談するのも一つの手

ご自身で製品を選んだり、上手に染めたりすることに不安を感じる場合は、プロである美容師さんに相談するのも、とても賢い選択です。
美容室では、あなたの髪質や頭皮の状態をプロの目で見て、たくさんの薬剤の中から一番合ったものを選んでくれます。
プロに任せる安心感
カウンセリングの時に、「前にヘアカラーで痒くなったことがあるんです」「アレルギーが心配で…」と正直に伝えてみてください。
そうすれば、美容師さんはノンジアミンカラーを提案してくれたり、頭皮に薬剤をつけないように丁寧に塗ってくれたり、頭皮を守る保護オイルを使ってくれたりと、色々な配慮をしてくれるはずです。
もし万が一トラブルが起きたときも、使った薬剤の正確な情報がわかるので、皮膚科で診てもらう時にも役立ちます。
まとめ:正しい知識で、これからもヘアカラーを楽しもう

自宅でのヘアカラーによる頭皮のかゆみは、とてもつらくて不安なものですよね。
ですが、その原因と正しい対処法、そして予防策を知ることで、そのリスクはご自身でコントロールすることが十分に可能です。
安全にヘアカラーを楽しむために、最後に一番大事なポイントをもう一度お伝えしますね。
- ヘアカラーの前には、48時間前のパッチテストを毎回必ず行いましょう。
- 過去にかぶれたことがある方は、ジアミンを含むヘアカラー剤は絶対に使いません。
- ご自身の体質に合わせて、ノンジアミンカラーやカラートリートメントなど、頭皮に優しい製品を賢く選びましょう。
- かゆみや赤みなど、少しでも異常を感じたら、掻かずにすぐに洗い流し、症状が続く場合はためらわずに皮膚科を受診しましょう。
この記事で得た知識を、ぜひあなたの安心に変えてください。
ご自身の体と上手に付き合いながら、これからもあなたらしいヘアカラーを、安全に楽しんでいってくださいね。
【免責事項】
本記事は、ヘアカラーによる皮膚トラブルに関する一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。
頭皮や皮膚に異常を感じた場合は、ご自身の判断で対処せず、速やかに専門の医療機関(皮膚科)を受診してください。
製品の使用前には、必ず製品本体に記載されている使用方法や注意事項をよくお読みください。本記事の情報を用いて行う一切の行為について、何らかのトラブルや損失・損害等が発生した場合、当方では一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
本記事に掲載されている画像は、あくまで説明のためのイメージです。
細部や状況が実際と異なることがありますので、ご留意ください。
【参考情報】
- 日本ヘアカラー工業会 |
- ヘアカラーの正しい使い方やパッチテストの方法について、業界団体が詳しく解説しています。
- 消費者庁 | 毛染めによる皮膚障害
- ヘアカラーによるトラブルの事例や注意喚起など、消費者保護の観点からの情報が掲載されています。
- 公益社団法人日本皮膚科学会
- 接触皮膚炎など、皮膚トラブルに関する専門的な情報を提供しています。
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