トヨタ自動車のフラッグシップ・スポーツカーとして、世界中にその名を知られる「スープラ」。
その現行モデル(A90型)が、まもなく生産を終了するというニュースが、多くの自動車ファンに衝撃を与えています。
1978年の初代登場から約47年、幾度かの空白期間を経て復活を遂げた伝説的なモデルの生産終了は、一つの時代の終わりを感じさせます。
トヨタ「スープラ」生産終了の衝撃!いつまで購入できる?
まず、多くの人が最も知りたいであろう「いつまでスープラを購入できるのか」という疑問について、公式な情報を整理します。
公式発表された生産終了のタイムテーブル
トヨタ自動車からの公式な発表によると、現行のGRスープラ(A90型)は、日本市場向けの生産を2026年春をもって終了することが明らかにされています。
2024年後半からこの情報は広まり始め、具体的な時期が確定した形です。
ここで重要なのは、今回の発表があくまで「現行A90型」の生産終了を指しているという点です。これは必ずしも「スープラ」という名前が永久に消滅することを意味するものではありません。
トヨタ自身も「今後もモータースポーツ活動を通じてスープラを鍛え続けていく」という声明を示唆しており、ブランドとしての進化が続く可能性を残しています。
A90型の新車購入はまだ間に合う?現在の販売状況
では、「2026年春までなら新車が買えるのか」と問われると、現状は極めて困難と言わざるを得ません。
生産終了のアナウンスが広まって以降、需要が供給を大幅に上回っており、多くの正規ディーラーではすでに受注が停止されているか、あるいは抽選販売へと移行しています。
報道によれば、納期は6ヶ月から11ヶ月に及ぶケースもあるとされ、事実上、これから新車でA90型スープラを手に入れるチャンスは非常に限られています。
究極の最終モデル「A90 Final Edition」とは
A90世代の最後を飾るモデルとして、トヨタは「究極、最高の性能、仕様を備えた特別なモデル」と自ら謳う特別仕様車「スープラ “A90 Final Edition”」を発表しました。
これは全世界で300台、そのうち日本市場には150台のみが割り当てられる、まさに集大成と呼ぶにふさわしい限定車です。
このFinal Editionは、標準モデルから大幅に出力が向上されたエンジン(387PSから441PSへ)だけでなく、モータースポーツ(GR Supra GT4)由来の技術が惜しみなく投入されています。
KW社製の高性能サスペンション、乗り心地よりも応答性を優先したアルミニウム製のリジッドマウント(標準はゴム製ブッシュ)、カーボン製のスワンネックリヤウイングなど、その仕様は公道を走るレーシングカーとも言える内容です。
その価格は1500万円と高額ですが、その希少性と性能から、日本国内では抽選販売という形が取られました。
スープラの歴史とは?初代「セリカXX」から続く47年の軌跡
A90型の終焉を理解するために、スープラが歩んできた47年間の長い歴史を振り返る必要があります。
原点は「セリカXX」- グランドツアラーとしての誕生 (A40/A60型)
スープラの物語は1978年に始まります。
しかし、最初から「スープラ」という独立した車種だったわけではありません。初代(A40型)は、トヨタの主力スペシャルティカー「セリカ」の派生モデル、「セリカXX(ダブルエックス)」として日本国内でデビューしました。
セリカのボディをベースにしつつ、よりパワフルで滑らかな直列6気筒エンジンを搭載するためにフロントノーズが延長され、日産のフェアレディZに対抗する豪華な「グランドツアラー」として位置づけられました。
この「セリカXX」という名前は日本国内専用で、北米などへの輸出時には「スープラ」(ラテン語で「至上」の意)という名称が与えられました。
1981年に登場した2代目セリカXX(A60型)では、リトラクタブルヘッドライトを持つシャープなデザインが採用され、スポーティなイメージを強めていきました。
独立と「TOYOTA 3000GT」への道 (A70型)
1986年はスープラの歴史における大きな転換点となります。
この年、ベースであったセリカが前輪駆動(FF)へとプラットフォームを変更したことを受け、セリカXXは完全に独立。後輪駆動(FR)スポーツカーとして、日本国内でも初めて「スープラ」の名を冠したA70型が誕生しました。
「TOYOTA 3000GT」というキャッチコピーが与えられたA70型は、かつての名車トヨタ2000GTの精神的後継者であることを示し、トヨタのフラッグシップスポーツとしての地位を確立します。
このモデルには、後に伝説となる2.5Lツインターボの「1JZ-GTE」エンジンなどが搭載されました。
伝説の「2JZ」と世界的アイコン化 (A80型)
1993年に登場した4代目スープラ(A80型)は、それまでのグランドツアラー的な性格から一変し、より純粋なスポーツカーとして生まれ変わりました。
流麗で筋肉質なデザインと、その心臓部に搭載された「2JZ-GTE」型3.0Lシーケンシャルツインターボエンジンが、このモデルを不滅の存在へと押し上げます。
鋳鉄製の頑丈なエンジンブロックは驚異的なチューニング耐性を持ち、アフターマーケット(改造市場)で絶大な支持を集めました。
とりわけ、2001年の映画『ワイルド・スピード』で主役級の活躍を見せたことは、A80型スープラを世界的な自動車アイコンとして決定づけました。
しかし、輝かしい歴史を築いたA80型も、当時の新しい排出ガス規制に対応することが困難となり、2002年に生産を終了。
ここからスープラの名は、17年という長い空白期間に入ります。
17年の時を経て- BMWとの共同開発による復活 (A90型)
ファンが待ち望んだスープラの復活が実現したのは2019年。それが現行のA90型です。この復活劇は、ドイツの自動車メーカーBMWとの戦略的パートナーシップによって可能となりました。
BMW Z4とプラットフォームやエンジンといった主要部分を共有するという手法は、一部の純粋主義者から様々な意見を呼びました。
しかし、現代において直列6気筒・後輪駆動のスポーツカーを単独でゼロから開発することは経済的に極めて困難であり、この提携はスープラの核となるアイデンティティを維持しつつ現代に蘇らせるための、最も現実的な選択でした。
A90型はGRブランドのフラッグシップとして、トヨタが本格的なスポーツカー市場に再び存在することを知らしめたのです。
スープラはなぜ生産終了する?ファンが注目する「後継機」の可能性
A90型の復活劇からわずか数年。なぜ、このタイミングで再び生産終了となってしまうのでしょうか。その理由と、ファンが最も気になる「後継機」の可能性について考察します。
生産終了の最大の理由:BMW Z4との「契約満了」
A90型スープラが生産終了する直接的かつ最大の理由は、その誕生の経緯そのものにあります。前述の通り、このモデルはBMWとの共同開発車であり、兄弟車であるBMW Z4とプラットフォームやエンジンを共有しています。
生産はトヨタの工場ではなく、オーストリアにあるマグナ・シュタイヤー社という専門メーカーがBMWの管理下で行ってきました。
報道によると、このBMWとの生産契約が満了を迎える時期が来たため、スープラの生産も同時に終了するというのが実情です。
兄弟車であるBMW Z4も同時期に生産を終える予定とされており、A90型スープラの運命は、誕生の瞬間からパートナーであるBMWの生産サイクルと密接に結びついていたのです。
2ドア・スポーツカー市場の縮小という現実
ビジネス的な側面も、この決定を後押ししたと考えられます。
重要な北米市場において、スープラの販売台数は2021年の約6,800台をピークに、2023年には約2,600台強へと減少傾向を示していました。
これは、高性能SUVの人気や世界的な電動化へのシフトといった流れの中で、A90型スープラが属する「2ドア・内燃機関(ガソリンエンジン)スポーツカー」という市場そのものが縮小しているという大きな現実を反映しています。
この販売状況は、トヨタとBMWの双方にとって、現行の契約を延長してまで生産を続けるための強力な動機にはなりにくかったと推測されます。
ファンの最大の関心事「後継機」は登場するのか?
では、スープラの名はA90型で本当に最後になってしまうのでしょうか。
ファンの最大の関心事である「後継機」について、トヨタからの明確な発表はまだありません。
しかし、いくつかのシナリオが噂されています。
一つは、トヨタが単独で内燃機関のスポーツカーを開発するという、純粋主義者にとっては理想的なシナリオです。
新開発のFRプラットフォームや、400馬力級とも噂される新しいエンジンを搭載するという憶測もありますが、莫大な開発コストが大きな壁となります。
最も有力な未来像:EVスポーツ「FT-Se」との関連性
現在、最も有力視されている未来像は、「バッテリーEV(電気自動車)」による後継モデルの登場です。
この可能性を強く示唆するのが、トヨタが2023年のジャパンモビリティショーで公開したコンセプトカー「FT-Se」の存在です。
FT-Seは、低くワイドな2シーターの高性能BEVスポーツカーであり、将来のGRブランドのフラッグシップとなり得るモデルとして紹介されました。
トヨタは企業としてカーボンニュートラルと電動化へ大きく舵を切っており、かつてLFAで培った「走りの味」を、次世代のBEVスポーツカーに継承していくと公言しています。
ここから導き出されるのは、未来のスープラは「直列6気筒エンジン」という形態ではなく、「トヨタの技術の粋を集めた、究極のドライバーズカー」という「哲学的役割」で定義されるだろう、という考察です。
その姿はガソリン車とは全く異なるかもしれませんが、その精神において、まぎれもなくスープラの後継者となる可能性を秘めています。
スープラ生産終了に対する世間の反応やコメントは?
この一連のニュースに対し、インターネット上では長年のファンから様々な声が寄せられています。
ネットで見られる多様な意見:「BMW製だから」「価格が高すぎる」
コメントなどを見ると、生産終了を惜しむ声や寂しさを吐露する意見はもちろんありますが、それ以上に目立つのはA90型スープラという車そのものに対する冷静な指摘です。
最も多く見られたのは、「中身がBMWだから」「トヨタ車ではない」といった、BMWとの共同開発であった点を指摘する意見です。
A80型までの純粋なトヨタ製(あるいはヤマハとの共同開発エンジン)であった歴史を知るファンほど、A90型を純粋なスープラとして受け入れ難かったという感情がうかがえます。
同時に、「価格が高すぎる」「庶民には買えない」「若者が手が届かない」といった、価格設定に関するコメントも多数を占めました。
スポーツカーが一部の富裕層だけのものになってしまった現状を嘆く声も多く、A90型が手の届きにくい存在であったことが分かります。
その他にも、「デザインが好みではなかった」というスタイリングに関する厳しい意見や、「高市早苗さんが乗っていた車」として政治的な話題と結びつけるコメントも散見されました。
17年の空白期間と「47年の歴史」という表現への指摘
また、報道で使われる「47年の歴史に幕」という表現に対し、「A80型の終了からA90型の復活まで17年ものブランクがあるのに、歴史を通算するのはおかしい」といった、歴史の数え方に対する鋭いツッコミも見られました。
これは、今回のA90型の生産終了も、A80型の時と同様に「一時的な休止」に過ぎず、いずれまた復活するのではないか、というファンの期待が込められた指摘とも取れます。
日本のスポーツカーの未来を憂う声
そして、「GTR、NSXに続きスープラまで無くなるのは寂しい」「ワクワクする時代の終わりを感じる」といった、日本のスポーツカー文化そのものの衰退を憂う声も非常に多く寄せられています。
実用的で効率的なSUVやコンパクトカーが市場を席巻する中で、夢やロマンを感じさせてくれるスポーツカーの選択肢が失われていく現状に、一抹の寂しさを感じているファンは少なくないようです。
【まとめ】スープラの伝説は「休止符」であり、次世代へ続く
トヨタ GRスープラ(A90型)の生産終了は、単なる一つのモデルの終わりではなく、BMWとの戦略的パートナーシップが迎えた「計画的な結論」です。
その最終形態である「A90 Final Edition」は、このプラットフォームが秘めていた究極のポテンシャルを証明する、歴史に残る技術的な傑作と言えます。
スープラの47年におよぶ歴史を振り返れば、それは連続的な生産の物語ではなく、時代の変化(規制や産業構造)に応じて「空白期間」と「復活」を繰り返してきた「サイクル」の物語であったことがわかります。
そうであるならば、今回の生産終了もまた、決定的な「終止符」ではなく、次なる進化のための「休止符」と捉えるのが妥当かもしれません。
直列6気筒エンジンの咆哮は間もなく止むことになります。しかし、トヨタのフラッグシップスポーツカーを創り続けるという意志は、豊田 章男さんをはじめとする経営陣が繰り返し表明している通り、揺らいでいません。
スープラの伝説は、その魂を新たな電動化時代のプラットフォームへと移し替え、再び私たちの前に姿を現す準備を始めているのではないでしょうか。





















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