2025年11月、インフルエンザで療養していた小学1年生の男の子が、東京・杉並区のマンション4階から落ちてしまうという、とても心配な事故が起きました。
このニュースは、「インフルエンザ」という誰もが知っている病気が、特に子どもにとって思いもよらない「異常行動」につながるかもしれない、という点を私たちに強く感じさせるものとなりました。
インフルエンザで小1男児が転落した事故の概要
事故が起きたのは、2025年11月17日のお昼前ごろと報じられています。この時間帯は、お昼ごはんの支度や、ちょっとした買い物などで、看病しているご家族が少しだけお子さんから目を離してしまうこともあり得る時間かもしれません。
発生場所は、東京都杉並区のマンションとされています。報道によると、「杉並区和田2丁目」とのことです。このあたりは、東京メトロ丸ノ内線の東高円寺駅から南側にある、マンションや一戸建てが並ぶ、ごく普通の住宅地です。
事故の詳しい様子ですが、「子どもがマンションから落ちた」「血が出ている」といった、大変切羽詰まった110番通報が近所の人からあったのは、11月17日のお昼前でした。
警察官が現場に駆けつけると、小学1年生の男の子がマンションの敷地で倒れているところが見つかったそうです。男の子はこのマンションの4階に住んでいて、そこから落ちてしまったと考えられています。
被害にあった男の子は、足などにけがをして、すぐに病院へ運ばれました。運ばれた時、意識はあったそうですが、呼びかけに答えられない、つまり「話ができない状態」だったと伝えられています。幸い、その後の情報では、命に危険はないとのことです。
発生時の状況ですが、男の子はインフルエンザにかかっており、学校を休んで家で休んでいました。そして、事故が起きた時、お母さんは「買い物」のため家をあけており、男の子は4階の部屋に一人でいたと見られています。
この「買い物」という情報からは、育児をしていなかったというわけではなく、毎日の生活の中で起こりうる「ほんの少しの時間、一人にしてしまった」という瞬間に、とても不幸な事故が重なってしまった可能性がうかがえます。
インフルエンザで小1男児が転落した原因は?
今回の杉並区の事故について、警視庁が転落した原因をくわしく調べている段階です。ただ、インフルエンザで休んでいたこと、ご家族がいない短い時間だったこと、そして高い場所から落ちてしまったという状況から、インフルエンザにかかった時に見られることがある「異常行動」が関係しているのではないか、と多くのメディアで報じられています。
では、この「異常行動」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。厚生労働省は、これまでの例から、高熱の時にうなされる「うわごと」などとは違う、いきなり起こる危ない行動の例をいくつか示しているようです。
厚生労働省は、インフルエンザ罹患時の異常行動について注意を呼びかけています。具体的な例として「突然立ち上がって部屋から出ようとする」「興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする」「人に襲われる感覚を覚え、外に走り出す」などを挙げています。
また、異常行動が最も起きやすい「危ない時期」についても明確に示しており、「発熱から2日間」は、就寝中を含めて特に注意が必要であると強く警告しています。
出典リンク: インフルエンザにかかった時は、飛び降りなどの異常行動をおこすおそれがあります。(患者さん・ご家族・周囲の方々へ)|厚生労働省
それらには、「急に立ち上がって部屋を出ようとする」「興奮した様子で窓を開けてベランダに出ようとする」「誰かに襲われるような感じがして、外に飛び出してしまう」といったものが含まれるとされています。これらの行動は、本人がやりたくてやっているわけではなく、あとで聞いても覚えていないことが多いと言われています。
異常行動が一番起きやすい「危ない時期」についても、厚生労働省ははっきりとした目安を示しているようです。報道などによれば、熱が出てから「少なくとも2日間」は、昼間だけでなく「寝ている間も含めて」特に気をつける必要があるとされています。
また、これまでの報告では、異常行動は学校に通う年齢の男の子に比較的多く見られる傾向があるとのことです。今回の杉並区のケース(小学1年生、男児)は、まさにこの特に注意が必要なケースに当てはまっていたんですね。
異常行動がなぜ起きてしまうのか、その仕組みは医学的にはまだ全部わかっていません。
専門家の中では、高熱そのものが原因で一時的に意識がはっきりしなくなる「熱性せん妄」ではないか、あるいは、ウイルスが神経に影響する重い合併症「インフルエンザ脳炎・脳症」の最初のサインではないか、といった見方もあるようです。
それに加えて、昔、インフルエンザのお薬(タミフルなど)との関係が大きく議論されたことがありました。2000年代に、10代の子どもがマンションから落ちて亡くなるという事故が続いたため、厚生労働省は2007年、10代の子どもへのタミフルの使用を「原則として禁止する」という対応をとった経緯があります。
でも、その後に行われた大きな調査や研究の結果、状況が変わりました。厚生労働省は、タミフル以外のお薬や、お薬を「まったく飲んでいない」場合でも同じように異常行動は起きていて、お薬を使ったかどうかで異常行動が起きる割合に「大きな違いはない」と結論づけたと報じられています。
こうした科学的な情報にもとづき、厚生労働省は2018年5月、「タミフルと異常行動の間の関係は、はっきりしない」として、10代へのタミフルの使用禁止をやめ、この措置は正式に解除されました。
ご家族にとって大切なのは、「インフルエンザになってから2日間は、お薬を飲んでいるかどうかに関係なく、また、たとえ熱が下がり始めたころであっても、いきなり異常行動が起きる可能性がとても高い」という点にあるのかもしれません。
実際、厚生労働省の最新のQ&A(令和6年度版)においても、「インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していない場合でも、同様の異常行動が現れること」「服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく、異常行動が現れること」が報告されていると明記されています。
お子さんの熱が高い時や様子がいつもと違うと感じたら、自己判断せず、かかりつけの医師や医療機関に相談することが大切ですね。
転落現場となった杉並区のマンションはどこ?
2025年11月17日に杉並区で起きたこの転落事故について、「事故が起きたマンションはどこなんだろう?」と、インターネットなどで現場の場所を知りたがる人もいるようです。読者の皆さんが気になっているかもしれない「場所はわかったの?」という点について、報道で公にされている情報と、そうでない情報をはっきり分けてお伝えします。
まず、報道で「このあたり」とされているエリアですが、事故現場のマンションは、東京都杉並区和田2丁目にあるとされています。この場所は、東京メトロ丸ノ内線の「東高円寺駅」から南へ700メートルほど行ったところにある住宅地で、まわりにはマンションや一戸建てのお家がたくさんある地域です。
その一方で、特定されていない「建物の名前」については、事故にあった男の子やご家族のプライバシーを守る必要があるため、テレビや新聞などでは、マンションの具体的な名前や、詳しい住所(番地)、そして建物の見た目がわかるような映像や写真は、一切報じられていません。
どこから落ちたのか、という点についても、男の子は4階の部屋から落ちて、敷地内で見つかりました。でも、それが「窓」からだったのか、それとも「ベランダ」からだったのか、といった部屋のどの場所から落ちたのかという詳しいことは、警視庁が原因を調べている最中であり、公表されていません。
インフルエンザ時の子供の転落事故を防ぐ注意点
杉並区で起きた事故は、インフルエンザにかかった時、大人がしっかり見守ることがどれだけ大切かを物語っています。でも、24時間、寝ている間もずっと、一瞬も目を離さずにいるというのは、現実にはとても難しいことですよね。
だからこそ、厚生労働省は「人が見守ること」と同時に、もし万が一、少し目を離したすきに異常行動が起きても、転落という一番怖い結果にならないための「家の中の環境を物理的に整えること」を、何度も強くすすめていると報じられています。
対策を考えるうえで、まず基本となるのは、やはり大人が見守ることの大切さです。異常行動は熱が出てから2日以内に起きることが多いため、この期間は、お子さんや未成年の方を一人にしないことが原則とされています。
杉並区の事故で、お母さんが「買い物」という、毎日の生活で必要な短い時間だけ家をあけていた間に起きているという事実は、「ちょっとの時間だけだから」「寝てるから大丈夫だろう」という考えが、とても危ないかもしれないことを示しています。
異常行動は、お子さん本人の気持ちや記憶と関係なく起きてしまうため、唯一できる有効なこととして、物理的に「事故が起きようがない環境」を大人が前もって作っておくことだと、専門家は指摘しているようです。
厚生労働省や各都道府県、専門の機関が共通してすすめている、具体的な対策を見てみましょう。
- 療養する「部屋」の選び方(推奨される対策) 異常行動の例として「興奮してベランダに出て飛び降りようとする」といった報告もあるため、できるだけベランダに面していない部屋で休ませることが望ましいとされています。杉並区の事故も高層階(4階)で起きています。また、窓に丈夫な「格子」がついている部屋を選ぶことや、もし一戸建てのお住まいなら、一番シンプルで効果が期待できる対策として「1階の部屋で寝かせる」こともすすめられています。
- 家中の「カギ」のかけ方(必須の対策) 異常行動には「外へ飛び出そうとする」行動も含まれるため、まずは玄関のカギをしっかりかけることが大切です。内側からのカギ(サムターン)やチェーンロックも活用しましょう。それと同時に、お子さんが休んでいる部屋だけでなく、家にあるすべての部屋の窓のカギをかけることも同じように大切です。特に、普通のカギ(クレセント錠)は、お子さんでも簡単に開けられてしまうことがあります。そのため、お子さんの手が届かない高い場所に取り付ける「補助錠(チャイルドロック)」を一緒につかって、物理的に開けられなくすることが、とても重要だと言われています。
日本の街に多いマンションやアパートなど、高い階に住んでいるご家庭にとって、お子さんの命を守るために一番大切な対策は、「補助錠」を取り付けることと、「ベランダに面していない部屋」を休む場所として選ぶこと、この2つにまとめられると専門家は指摘しています。
どのような対策がご自宅の環境に合っているか、心配な点はかかりつけの医師や地域の保健センターなどに相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
2025年11月17日に東京都杉並区和田で起きた、小学1年生の男の子がマンションの4階から落ちてしまった事故。
この出来事は、インフルエンザで休んでいる時に潜んでいる「異常行動」というものが、いかに突然で、本当に起こりうる危険なのかを、私たちに強く感じさせました。
このような行動は、インフルエンザになってから、特に危ないとされる「2日間」に多く起こると報告されています。そして、それはタミフルなどのお薬を飲んでいるかどうかとは関係なく、誰にでも起こる可能性があるものなんです。
このような心配な事故から私たちができる備えは、「二重の守り」の必要性かもしれません。厚生労働省も呼びかけているように、一つ目は「人による守り」です。熱が出てから2日間は、寝ている間も昼間も、買いもののような短い時間であっても、お子さんを決して一人にしないこと。
二つ目は「物による守り」です。もし万が一、目を離した瞬間に異常行動が起きても事故にならないよう、家の環境を整えることです。
具体的には、「すべての窓と玄関のカギをしっかりかける(補助錠も使う)」こと、そして「休む部屋の場所を選ぶ(ベランダから遠い部屋にし、できるなら1階にする)」ことです。
インフルエンザのウイルスが家に入ってくるのを完全に防ぐのは難しいかもしれません。でも、自宅の「窓のカギ」や「部屋の場所」は、ご家族が今すぐにでも見直すことができます。
杉並区の事故を「よその場所で起きた、かわいそうな事故」と考えるのではなく、これから本格化するインフルエンザの季節に備えて、ご自宅の環境をもう一度チェックする「私たち自身の問題」として捉えることが大切なのではないでしょうか。


























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