QRコードでウイルスに感染する?危険性と仕組みを徹底解説

QRコードでウイルスに感染する?危険性と仕組み

私たちの日常生活に深く浸透しているQRコードは、その「Quick Response(高速読み取り)」という名の通り、スマートフォンで簡単にスキャンできる手軽さから、非常に便利なツールとして広く利用されています。

製品情報、ウェブサイトのリンク、アプリケーションのダウンロード先、キャッシュレス決済、イベントのチケット認証、レストランのメニュー表示、公共交通機関の案内など、その用途は多岐にわたります。

特にCOVID-19パンデミック以降、非接触ソリューションへの需要が高まり、QRコードの利用は飛躍的に増加しました。2025年には世界のQRコードスキャン回数が4177万回に達し、これは2021年と比較して433%もの増加を示すと予測されています。

しかし、その利便性の裏側には、多くのユーザーが抱く「QRコードをスキャンするだけでウイルスに感染するのか?」といった安全性に関する懸念や、スキャンした先のウェブサイトが偽サイトであるケースが多いという認識も広がっています。

これは、QRコードが目に見えない情報を格納しているため、スキャンするまでその内容を判断できないという特性に起因します。

QRコードの基本と潜む危険性

未来的なサイバー空間で青白く光るQRコード。テクノロジー、ネットワーク、データの安全性と、フィッシング詐欺やハッキングといった潜在的な危険性を象徴するビジュアル。

QRコードの利用が広がるにつれて、その安全性に関する疑問も増えています。特に「QRコードをスキャンするだけでウイルスに感染するのか?」という問いは多くの人が抱くものです。

ここでは、QRコードの基本的な仕組みと、それに潜む本当の危険性について詳しく解説します。

QRコードを読み取るだけでウイルス感染はするのか?

QRコードを読み取るだけでウイルスに直接感染することはありません。

QRコードの危険性「クイッシング」を説明するイラスト。QRコードのスキャンから悪意のあるサイトへのアクセス、そして被害発生までの手口を図で示している。

QRコードは、1994年に日本のデンソーウェーブが開発した二次元バーコードの一種であり、最大で約4,000文字の英数字、または7,089桁の数字、2,953バイトもの大量のデータを小さなスペースに効率的に格納できる「情報を格納し、それを読み取るためのデータ形式」に過ぎないからです。

URL、電話番号、テキストメッセージ、アプリケーションのダウンロードリンク、Wi-Fi接続情報、さらには決済情報といった多種多様な情報を埋め込むことが可能ですが、それ自体がウイルスやマルウェアのプログラムコードを含んでいるわけではありません。

したがって、QRコードをスキャンした瞬間に、デバイスが直接ウイルスに感染するという事態は発生しないと理解することが重要です。

QRコードは、デジタルデバイスが解釈できるバイナリコードのパターンとして情報を表現しているに過ぎないため、そのデータ構造自体に悪意のある実行ファイルが含まれることはありません。

クイッシングの主な脅威を示したグラフ。「フィッシングサイトへの誘導」が半数以上を占め、その他にマルウェア感染や不正アプリのダウンロード、個人情報の詐取といった危険性があることを示している。

QRコードに関連する実際のセキュリティリスクは、コード自体ではなく、そのコードが指し示す「リンク先」に潜んでいます。ユーザーはQRコードの「Quick Response(高速読み取り)」という利便性から、深く考えずにスキャンし、指示に従う傾向があります。

これは、ウェブサイトのURLを直接入力したり、メール内のリンクをクリックしたりする際にユーザーが通常行う、事前のURL確認やドメインチェックといったセキュリティ判断プロセスを短絡させてしまう可能性があります。

QRコードを安全に利用するための4つの対策を示した図。1.提供元不明はスキャンしない、2.リンク先を必ず確認、3.個人情報の入力は慎重に、4.OSとアプリを最新に、というポイントを説明している。

QRコードを悪用した攻撃の手口とは?

サイバー攻撃者は、QRコードが指し示すリンク先を悪用し、様々な巧妙な手口でユーザーを騙します。これらの手口は「クイッシング(Quishing)」と呼ばれ、「QRコード」と「フィッシング」を組み合わせた造語です。2023年にはクイッシングの発生件数が51%増加したという報告もあり、その脅威は拡大の一途を辿っています。

サイバー攻撃者の巧妙な手口を6つに分類した解説図。QRコードの貼り替え、SMS等での誘導、マルウェア感染、不正送金、Wi-Fiからの情報窃取、認証情報の詐取といった具体的な脅威を紹介。

主な詐欺の手口としては、まず「物理的な偽QRコードの貼り替え」が挙げられます。これは、店舗のレジ横やATM、公共施設の案内板などに設置された正規のQRコードの上に、詐欺師が偽のQRコードを上から貼り付ける手口です。

利用者は正規のものと見分けがつきにくいため、気づかずにスキャンしてしまい、フィッシングサイトへ誘導されたり、不正な決済をさせられたりするリスクがあります。

例えば、決済用QRコードの上に偽のコードが貼られていると、振り込んだお金が直接詐欺犯に送金される可能性があります。

次に、「メールやメッセージアプリを通じた誘導」があります。見覚えのない会社や不審な内容のメール、SMS、ダイレクトメッセージ(DM)にQRコードが添付されており、それをスキャンすると偽のログインページやウイルスを仕込んだサイトにアクセスさせられる手口です。

これらのメッセージは、大手ECサイト、クレジットカード会社、公的機関などを装い、ユーザーを騙そうとします。従来のメールフィルターではQRコード内のURLを解析できない場合があり、セキュリティ対策をすり抜けて受信トレイに届くことがあります。

さらに、「悪意あるアプリやマルウェアのダウンロード誘導」も手口の一つです。QRコードをスキャンした後、特定のアプリケーションやファイルのダウンロードを促し、これにウイルスを仕込むことで、個人情報の流出やスマートフォンの遠隔操作などが行われるリスクが生じます。

過去には、Google Playストアで1000万回以上ダウンロードされた正規のQRコードリーダーアプリにマルウェアが仕込まれていた事例も報告されています。

不正な決済・送金への誘導」も増加しています。QRコード決済サービスの普及を悪用し、特に「返金が必要」などと偽ってQRコードをスキャンさせ、実際には被害者自身の口座から詐欺師に送金させる「返金詐欺」が急増しています。

また、チャリティーや募金を装い、寄付を呼びかけるQRコードをスキャンさせ、詐欺師の口座に送金させる手口も存在します。

危険なWi-Fiネットワークへの自動接続」も注意が必要です。QRコードをスキャンすることで、意図せず悪意のあるWi-Fiネットワークに自動接続させられる可能性があります。

これにより、通信内容が傍受されたり、DNS設定が操作されて偽サイトにリダイレクトされたりするリスクがあり、個人情報が窃取される危険性が高まります。

その他にも、QRコードはURLへの誘導だけでなく、連絡先の不正登録、高額な電話番号への発信や SMS送信といった、ユーザーのデバイス上で様々な操作を自動的に引き起こす可能性があります。

さらに、QRコードは、身元の証明やワクチン証明書といった、個人を認証する証明書として使われるケースも多く、このような場合、個人情報や診療記録と同様に機密性の高いデータがQRコードに含まれることを意味します。

攻撃者はQRコードをスキャンするだけで簡単に機密情報を入手可能となることがあります。WhatsApp、Telegram、Discordといった多くのアプリがQRコードを使用し、アカウントへアクセスするための認証処理を行っており、攻撃者は標的としたサービスになりすまして、偽のQRコードをユーザーにスキャンさせることが可能です。

QRコードの危険性:具体的な被害事例

QRコード詐欺は、その手口が日々巧妙化し、被害が拡大しています。具体的な被害事例を理解することで、その危険性をより深く認識できます。

QRコード詐欺(クイッシング)による近年の主な被害事例。Microsoftを装うフィッシングによる認証情報窃取、短縮URLを悪用したクレジットカード不正利用、リダイレクトを悪用しマルウェア感染から銀行口座の不正送金に至ったケースなど、実際に発生したサイバー攻撃の手口と被害を3つの事例で解説。

2023年5月には、Microsoftのセキュリティ警告を装ったQRコードフィッシングが大規模に確認され、偽のログインページに誘導して認証情報を窃取する手口が報告されました。この攻撃以降、サイバー犯罪者はこの手法を継続的に悪用しています。

また、2023年11月には、大手自動車用品販売業者の会員向けDMに記載されたQRコードから、不正な広告サイトへ誘導され、クレジットカードが不正利用される被害が発生しました。これは短縮URLの悪用によるもので、短縮URLを提供するサービスによっては、広告表示後に悪意のあるサイトへ遷移させるという巧妙な手口が用いられていました。

一度は正規サイトに飛んだQRコードが、しばらくすると不正サイトに転送されるようになる「リダイレクトの悪用」も確認されており、家賃のオンライン支払いや商品在庫切れによる返金を装った詐欺事例も報告されています。ある事例では、マルウェア感染により銀行口座から約230万円が不正に引き出されるという甚大な被害も発生しています。

QRコードを利用した「返金詐欺」の相談件数と被害額を示す図。左のグラフは、国民生活センターへの相談件数が2024年4月には前年同月比で約20倍に急増したことを示している。右側では、マルウェア感染による不正引き出しで約230万円もの甚大な金銭的被害が出た事例を紹介。

国民生活センターへのQRコード詐欺に関する相談件数は急増しており、特に「返金詐欺」の相談は2024年4月には前年同月の約20倍に達しました。これは、QRコード詐欺が従来のフィッシングに比べて罠に気づきにくく、被害を認識するまでに時間がかかりやすいという特性を持つため、被害が拡大しやすい傾向にあることを示しています。

QRコード詐欺は、その多様な手口と具体的な被害によって、ユーザーに深刻な影響を及ぼす可能性があります。

例えば、物理的な偽QRコードの貼り替えでは、偽サイトへの誘導、個人情報窃取、不正送金(決済額が詐欺犯に直接送金)といった被害が想定されます。

メール・メッセージアプリを通じた誘導では、偽ログインページへの誘導、認証情報(ID/パスワード)窃取、個人情報窃律、マルウェア感染が起こりえます。

悪意あるアプリ・マルウェアのダウンロード誘導では、個人情報流出、スマートフォンの遠隔操作、デバイス乗っ取り、不正な取引のリスクがあります。

不正な決済・送金への誘導では、金銭的被害(例:230万円の不正引き出し、返金詐欺の相談件数20倍)が発生しています。危険なWi-Fiネットワークへの自動接続では、通信内容の傍受、DNS操作による偽サイトへのリダイレクト、個人情報窃取のリスクが高まります。

偽の警告表示とサポート詐欺では、マルウェア感染、個人情報窃取、高額なサポート料金の詐取が起こりえます。

イベントチケットの偽造では、金銭的被害やイベント入場不可となることがあります。短縮URLの悪用では、不正広告サイトへの誘導、クレジットカード不正利用、偽サイトへのリダイレクトといった被害が報告されています。

もしかして感染?QRコードを読み取ってしまった後の対処法

赤く光る不正なQRコードをスキャンするスマートフォン。QRコードの危険性、ウイルス感染、サイバーセキュリティの脅威を警告する画像。

もし不審なQRコードを読み取ってしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。

ここでは、危険なQRコードを読み取ってしまった後の状況と、万が一ウイルス感染が疑われる場合の確認方法、そして個人情報が抜き取られた際の二次被害を防ぐ対策について解説します。

危険なQRコードを読み取ってしまったらどうなる?

QRコードに潜む危険性の仕組みを解説する図。「QRコードをスキャン」→「悪意のあるリンクへ」→「危険なサイトに接続」という流れを示している。QRコード自体はウイルスではないが、見えないリンク先によってフィッシングサイトやマルウェアをダウンロードさせるサイトに誘導される脅威を説明。

危険なQRコードを読み取ってしまった場合、直接ウイルスに感染するわけではありませんが、そのリンク先が悪意のあるサイトである可能性があります。

具体的には、偽のウェブサイト(フィッシングサイト)に誘導されたり、マルウェアのダウンロードを促されたり、デバイスの個人情報や認証情報を窃取されたりする可能性があります。

QRコードは人間が直接その内容を読み取ることができないため、悪意のあるリンクが隠されていても、スキャンしてプレビューが表示されるまでユーザーにはその危険性が分かりにくいという特性があります。

この「見えない情報」という特性は、QRコードの利便性を高める一方で、攻撃者にとっては悪用しやすい盲点となります。ユーザーはQRコードの利便性から、深く考えずにスキャンし、指示に従う傾向があります。

これは、ユーザーが通常ウェブサイトのURLを確認する際に行うような事前のリスク評価を困難にさせ、潜在的なリスクを意識しにくくし、悪意のある操作を自動的に実行させてしまう危険性を増幅させます。

ウイルス感染が疑われる場合の確認方法と対処ステップ

スマホやPCがウイルス感染した時の3つの対処ステップを解説する図。ステップ1:OSやセキュリティソフトの「危険なサイト」などの警告を無視しない。ステップ2:信頼できるアンチウイルスソフトでデバイス全体をスキャンする。ステップ3:OSとアプリを最新化し脆弱性を塞ぐ。という具体的な手順を紹介。

もしQRコードを読み取った後に、デバイスの動作がおかしい、不審なポップアップが表示される、バッテリーの消耗が異常に早いといったウイルス感染が疑われる症状が出た場合は、以下のステップで確認と対処を行いましょう。

まず、スマートフォンやPCのOS、またはインストールされているセキュリティソフトウェアが「詐欺サイトの可能性」「危険なサイトをブロックしました」などの警告を表示した場合、決して無視せず、すぐにアクセスを中止してください。

これらの警告は、潜在的な脅威からユーザーを保護するための重要なサインであり、システムの自動検知機能が作動した証拠です。

次に、スマートフォンやタブレットに信頼できるセキュリティソフトウェア(アンチウイルスソフト)をインストールし、常に最新の状態に保つことが重要です。これにより、悪意のあるファイルやウェブサイトからの保護を強化し、マルウェア感染による個人情報窃取やデバイスの不正操作を防ぐことができます。

もし既にインストールされている場合は、最新の状態に更新し、フルスキャンを実行してマルウェアが検出されないか確認してください。また、デバイスのOSやアプリケーションのセキュリティパッチも迅速に適用し、既知の脆弱性を修正することが不可欠です。

もし個人情報が抜き取られたら?二次被害を防ぐ対策

フィッシング詐欺などで個人情報を入力してしまった場合の4つの対処法。二次被害を防ぐため、1.パスワードを即時変更する、2.多要素認証(MFA)を有効化する、3.金融機関(カード会社や銀行)へ連絡する、4.公的機関(国民生活センターや警察)に相談する、という具体的な行動を解説。

もしQRコードを介して個人情報や認証情報が抜き取られてしまった可能性がある場合、二次被害を防ぐための迅速な対策が必要です。

まず、QRコードをスキャンしてアクセスしたサイトで、個人情報(氏名、住所、電話番号、クレジットカード情報、銀行口座情報、ID/パスワードなど)の入力を求められた場合は、その必要性とサイトの信頼性を再度厳重に確認してください。

もし入力してしまった場合は、速やかに該当するサービスのパスワードを変更しましょう。特に、同じパスワードを複数のサービスで使い回している場合は、他のサービスでも不正ログインのリスクがあるため、すべてのパスワードを変更することが強く推奨されます。

次に、多要素認証(MFA)を導入していれば、不正アクセスを大幅に防ぐことができます。QRコードを介してログイン情報を窃取された場合でも、MFAはパスワードだけでなく、スマートフォンアプリで生成される認証コードや生体認証など、複数の要素を組み合わせて本人確認を行うため、たとえパスワードが漏洩しても不正ログインのリスクを低減できます。

まだ設定していないサービスがあれば、すぐに設定を有効にしましょう。

クレジットカード情報や銀行口座情報が抜き取られた可能性がある場合は、すぐにカード会社や金融機関に連絡し、不正利用の有無を確認してください。不正利用が確認された場合は、カードの利用停止や口座の凍結などの措置を講じてもらいましょう。

特に決済情報については、リアルタイムの決済結果通知などを活用し、不正利用がないか常にチェックする習慣をつけることが大切です。

最後に、国民生活センターや警察などの公的機関に相談することも重要です。QRコード詐欺に関する相談件数は急増しており、適切なアドバイスや支援を受けることができます。

安全にQRコードを利用するためのセキュリティ対策

スマートフォンの上に浮かぶQRコード。モバイル決済やアプリでのスキャンを安全に行うための、情報保護やセキュリティ対策の重要性を表すテクノロジー関連のイラスト。

QRコードは便利なツールですが、その安全な利用にはユーザー自身の意識と対策が不可欠です。

ここでは、QRコードを安全に利用するための具体的なセキュリティ対策について解説します。

QRコードを読み取る前に確認すべきこと

QRコード詐欺(クイッシング)の対策として、スキャン前に確認すべき5つの習慣。1.提供元の信頼性、2.ステッカーなど物理的なすり替えの有無、3.URLプレビューの活用、4.ドメイン名のスペルミス確認、5.bit.lyなどの短縮URLへの警戒といった、フィッシングサイトへの誘導を未然に防ぐための具体的なチェック項目を解説。

QRコードをスキャンする前に、以下の5つのポイントを確認する習慣を身につけることが、被害を未然に防ぐ上で極めて重要です。

まず、「提供元の信頼性を確認する」ことが大切です。QRコードの提供元が、公式の店舗、企業、行政機関など、信頼できる組織であるかを必ず確認してください。見覚えのない会社や不審な内容のメッセージに添付されたQRコード、あるいは街頭のポスターやチラシに貼られたQRコードには特に警戒が必要です。

少しでも不安を感じる場合は、QRコードを使用せず、そのサービスや企業の公式サイトを別途検索してアクセスするなどの代替手段を検討することが賢明です。

次に、「物理的な違和感がないかチェックする」習慣をつけましょう。公共の場に設置されたQRコード(例:店舗のレジ横、ATM、案内板など)の場合、上から別のステッカーが貼り付けられていないか、剥がれかかった跡がないか、不自然な厚みがないかなどを物理的に確認してください。

これは、詐欺師が正規のQRコードを偽のものにすり替える手口に対抗するための重要な目視確認です。

そして、「QRコードリーダーアプリのプレビュー機能を活用する」ことを忘れないでください。多くのQRコードリーダーアプリやスマートフォンの標準カメラアプリには、QRコードをスキャンした後、実際にアクセスする前にリンク先のURLや情報をプレビュー表示する機能が搭載されています。

このプレビュー機能を必ず利用し、表示されたURL全体を慎重に確認する習慣をつけましょう。

最も重要なのは、「表示されるURLを慎重に確認する」ことです。プレビューで表示されたURLが、期待する正規のサイトのものであるかを厳しくチェックすることが不可欠です。URLが「https://」で始まっているかを確認することも大切ですが、フィッシングサイトでもHTTPSが使われることがあるため、これだけでは安全とは言えません。

最も重要なのは、ドメイン名が正規のものと完全に一致しているかです。

有名企業やサービス名に似せたスペルミス(例:anazon.com)、無関係な単語の追加(例:example-security.com)、怪しいトップレベルドメイン(例:.xyz、.info)、あるいは正規のドメインがサブドメインとして使われているケース(例:amazon.co.jp.malicious-site.com)などに細心の注意を払う必要があります。

スキャン後に表示されたサイトの内容が、意図したものでない場合(例:突然クレジットカード情報を求められる)は、すぐに接続を中止してください。

最後に、「短縮URLには特に注意する」必要があります。bit.lyやt.coなどの短縮URLは、実際のリンク先を隠してしまうため、特に注意が必要です。

短縮URL自体は悪意のあるものではありませんが、詐欺に頻繁に利用される傾向があります。信頼できる提供元からのものでない限り、アクセスを避けるのが賢明です。

また、短縮URLは一度安全に見えても、後からリンク先が変更される可能性もあるため、継続的な警戒が必要です。

安全なQRコードリーダーアプリの選び方と設定

QRコードを安全に利用するためのツール選びとOS活用法。「安全なQRリーダーの選び方」として標準カメラアプリの使用やサードパーティ製アプリの注意点、「OSのセキュリティ機能の活用」として警告の確認、セキュリティソフトの導入、OSやアプリの最新化という、2つの側面から具体的な対策を解説。

安全にQRコードをスキャンするためには、使用するQRコードリーダーアプリの選択も重要です。

スマートフォンの標準カメラアプリ(iOS 11以降のiPhone/iPad、多くのAndroid端末)にはQRコードリーダー機能が内蔵されており、これらが最も安全な選択肢の一つです。

サードパーティ製のアプリを使用する場合は、Google PlayストアやApple App Storeで口コミやレビュー評価が高く、開発元が明確なものを選びましょう。

過去には悪質なQRコードリーダーアプリも存在したため、アプリの選択には慎重さが求められます。Kaspersky Secure QR ScannerやTrend Micro Scam Busterのように、スキャン前にリンクの安全性をチェックする機能を備えたセキュリティアプリの利用も推奨されます。

また、QRコードの読み取り時に、ウェブサイトを開く、ファイルをダウンロードする、Wi-Fiに接続するといった操作が自動的に実行されないよう、アプリのオプション設定を確認し、自動実行機能を無効化することも検討しましょう。

OSのセキュリティ機能を活用する

スマートフォンやPCに搭載されているOSのセキュリティ機能を最大限に活用することも、QRコード詐欺から身を守る上で不可欠です。

まず、OSやインストールされているセキュリティソフトウェアが「詐欺サイトの可能性」「危険なサイトをブロックしました」などの警告を表示した場合、決して無視せず、すぐにアクセスを中止してください。

これらの警告は、潜在的な脅威からユーザーを保護するための重要なサインであり、システムの自動検知機能が作動した証拠です。

次に、スマートフォンやタブレットに信頼できるセキュリティソフトウェア(アンチウイルスソフト)をインストールし、常に最新の状態に保つことが重要です。

これにより、悪意のあるファイルやウェブサイトからの保護を強化し、マルウェア感染による個人情報窃取やデバイスの不正操作を防ぐことができます。

また、デバイスのOSやアプリケーションのセキュリティパッチも迅速に適用し、既知の脆弱性を修正することが不可欠です。

企業・店舗がQRコードを安全に提供するための注意点

カフェやレストランなど飲食店でのQRコード決済。店員が案内するQRコードをスマートフォンでスキャンするだけで、キャッシュレスで簡単に支払いができる利便性を表現。

QRコードは顧客との接点を増やす便利なツールですが、企業や店舗が提供するQRコードが悪用されるリスクも存在します。顧客を詐欺から守り、信頼を維持するためには、提供側も適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

QRコード発行時のセキュリティリスク

QRコード発行時のセキュリティリスク、特に短縮URLに潜む罠についての解説図。短縮URLが悪意のある広告の表示や、将来のサービス終了によるリンク切れといった危険性を持つことを指摘。対策として、リンク先が明確で信頼できるサービスを選び、発行後に定期的な動作確認を行うことを推奨している。

企業や店舗がQRコードを発行する際には、いくつかのセキュリティリスクに注意が必要です。

まず、短縮URLを利用してQRコードを作成している場合は特に注意が必要です。短縮URLは大変便利な仕組みである一方で、無料で使える短縮URLサービスの中には直接リンク先には飛ばずに、広告ページを表示させてから遷移させるようなサービスもあります。

仮に表示された広告が悪意のある広告であった場合、事業者側が作成したQRコードを読み込んだ利用者に予期せぬ被害が発生する可能性があります。

また、今は広告ページが表示されていなくても、今後短縮URLを提供するサービス事業者側が広告ページを表示するよう仕様を変更したり、意図せずサービス提供が終了したりする可能性もありますので、そうしたリスクも踏まえたうえで利用するようにしましょう。

QRコードを生成する際は、信頼できるサービスを利用することが望ましいです。QRコードが本物であり、想定された操作が実行されることを確認できるサービスを選ぶことが重要です。

顧客を詐欺から守るための啓発と対策

事業者向けに、顧客をQRコード詐欺から守るための積極的な対策を図解。左側で「従業員への教育と訓練」として継続的なセキュリティ教育と攻撃想定訓練を、右側で「顧客への啓発と物理的対策」として積極的な注意喚起と定期的な目視確認の重要性を解説。

企業や店舗は、顧客がQRコード詐欺の被害に遭わないよう、積極的な啓発と対策を行う責任があります。

従業員への継続的なセキュリティ教育を実施し、最新のQRコード詐欺の手口やその対策を含めた知識を周知徹底することが重要です。

これにより、従業員自身が詐欺の被害に遭うことを防ぐだけでなく、顧客からの問い合わせにも適切に対応できるようになります。

また、攻撃を実際に受けてしまったことを想定した訓練を定期的に行うことも有用です。社内で教育、訓練を行うことで、万一攻撃を受けた場合でも焦らずに対応できるでしょう。

顧客に対しては、QRコードの安全性に関する注意喚起を積極的に行うべきです。例えば、店舗内のQRコードの近くに「このQRコードは正規のものです。不審な点があればスキャンしないでください」といった注意書きを掲示したり、ウェブサイトやSNSでQRコード詐欺の手口と対策に関する情報を発信したりすることが考えられます。

特に、物理的なQRコードを設置している場合は、定期的に目視で確認し、上から偽のQRコードが貼り付けられていないかをチェックする体制を整えることが重要です。

【Q&A】QRコードのウイルス感染に関するよくある疑問

QRコードの安全性に関して、よくある疑問とその回答をまとめました。

LINEのQRコードも危険なの?

LINEのようなメッセージングアプリが提供するQRコードも、悪用される危険性はゼロではありません。多くのアプリがQRコードを使用し、アカウントへアクセスするための認証処理を行っています。

攻撃者は標的としたサービスになりすまして、偽のQRコードをユーザーにスキャンさせることが可能です。これにより、ログイン情報を盗み、アプリへ不正にアクセスされる可能性があります。

LINEのQRコードを介して友だち追加やログインを行う際も、提供元が信頼できるか、URLに不審な点がないかなどを慎重に確認することが重要です。見知らぬ人からのQRコードや、不審なメッセージに添付されたQRコードは安易にスキャンしないようにしましょう。

QRコードはどのようにして作られるの?

QRコードは、1994年に日本のデンソーウェーブが開発した二次元バーコードの一種です。従来の一次元バーコードが限られた英数字情報しか格納できず、一方向(縦方向)からしか読み取れなかったのに対し、QRコードは縦横二方向から読み取りが可能です。

これにより、URL、電話番号、テキストメッセージ、アプリケーションのダウンロードリンク、Wi-Fi接続情報、さらには決済情報といった多種多様な情報を埋め込むことが可能となっています。

QRコードを作成するツールはインターネット上で多数提供されており、だれでも無料で簡単に作成することができます。この手軽さが、悪意のある攻撃者にも利用されてしまう要因の一つです。

安全なQRコードと危険なQRコードの見分け方は?

QRコード自体は見た目では安全か危険かを見分けることが非常に困難です。なぜなら、QRコードは「見えない情報」を格納しているため、スキャンするまでその内容を判断できないからです。

しかし、スキャンする前の状況や、スキャン後のプレビューで表示される情報から、危険性を判断するポイントがあります。

安全なQRコードを見分けるためには、まず「提供元の信頼性を確認する」ことが最も重要です。公式の店舗、企業、行政機関など、信頼できる組織が提供しているQRコードであるかを確認しましょう。

次に、公共の場に設置されているQRコードの場合、「物理的な違和感がないかチェック」してください。上から別のステッカーが貼り付けられていないか、剥がれかかった跡がないか、不自然な厚みがないかなどを目視で確認します。

スキャン後には、QRコードリーダーアプリやスマートフォンの標準カメラアプリの「プレビュー機能を活用」し、表示されたURLを必ず確認しましょう。

この際、「表示されるURLを慎重に確認する」ことが不可欠です。URLが正規のサイトのドメイン名と完全に一致しているか、スペルミスや不自然なサブドメインがないか、HTTPSで始まっているかなどを厳しくチェックします。

また、bit.lyやt.coなどの「短縮URLには特に注意」が必要です。信頼できる提供元からのものでない限り、アクセスを避けるのが賢明です。

もし少しでも違和感や不審な点を感じた場合は、「怪しい」と感じたらスキャンしない勇気を持つことが、最も安全な対策となります。

QRコードの謎解明!白黒模様が情報を伝える仕組みを優しく解説

免責事項
本記事は、QRコードの安全性に関する情報を提供することを目的としています。掲載されている情報は、一般的な知識の提供を意図しており、個別の状況に対する法的、技術的、またはセキュリティ上の助言を構成するものではありません。QRコードの利用には常に注意を払い、最新のセキュリティ対策を講じることを推奨します。

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