2025年11月、群馬県前橋市の小川晶さんが殺害予告を受けていたことが明らかになりました。この脅迫事件に関して、群馬県警は市内に住む68歳の男を逮捕しています。
一連の騒動の発端には、小川晶さんが既婚の市職員とラブホテルを不適切に利用していたとされる、いわゆる「ホテル問題」があります。
本記事では、逮捕された人物像、具体的な脅迫の内容、そして犯行に至った動機と経緯について、報道されている情報を基に詳しく掘り下げていきます。
前橋市長(小川晶)脅迫事件の犯人男性は誰？
2025年11月12日、群馬県警捜査1課と前橋署は、前橋市長である小川晶さんを名指しして脅迫した疑いで、市内に住む無職の男（68）を逮捕しました。
逮捕された男の基本的なプロフィールは、年齢68歳、職業は無職、そして前橋市南橘町に居住していると報じられています。
捜査関係者によると、この男は2025年10月に小川晶さんの事務所に対して電話をかけ、市長の殺害をほのめかす内容の脅迫を行った疑いが持たれています。
非常に重要な点として、逮捕された男と小川晶さんとの間に、個人的な面識や知人関係は一切なかったことが警察の調べで判明しています。
この事実は、犯行の動機が個人的な怨恨によるものではなく、小川晶さんの公人としての行動、特に後述する「ホテル問題」とその後の対応に関連するものである可能性を強く示唆しています。
前橋市民であり、市長と直接の接点がない一市民が、自らの市長に対してこのような犯罪行為に及んだという構図は、この問題が市民感情に深刻な影響を与えていたことを浮き彫りにしています。
逮捕された男の人物像と「殺したくなっちゃった」脅迫電話の詳細
今回の逮捕劇の中心にあるのは、一本の脅迫電話です。その詳細と、逮捕された男の人物像について、より深く見ていきます。
逮捕された68歳の無職の男は、「高橋正」容疑者として特定されています。前橋市南橘町に住む高橋正容疑者は、前述の通り市長とは一切面識のない一般市民でした。
高橋正容疑者が脅迫電話をかけたとされるのは、10月17日の午後3時45分ごろからの約9分間にわたってのことでした。特筆すべきは、この電話が前橋市役所の代表番号や市長の秘書課に直接かかってきたものではなかった点です。
電話がかかった先は、小川晶さんが自身の「ホテル問題」に対する市民からの抗議や意見に対応するために特別に設置した「コールセンター」（市長事務所内に開設）でした。
このコールセンターは、後述する1万件以上とも報じられる抗議電話が市役所に殺到し、業務に支障をきたした事態を受けて、市長側が市民の不満の「受け皿」として設置した窓口でした。
高橋正容疑者は、その怒りを鎮めるための窓口を、逆に怒りを増幅させて伝える手段として利用したことになります。電話はコールセンターの事務員（男性職員）が応対したとされています。
高橋正容疑者が9分間にわたって発したとされる言葉は、単なる抗議や罵倒を超えた、明確な脅迫でした。複数の情報源によれば、その内容は「殺したくなっちゃったよ」「責任取らねんかい」「小川に言っておけ」といったものであったと報じられています。
特に「殺したくなっちゃったよ」という言葉は、抑えきれない怒りや不満が衝動的な暴力性として表出したかのような異様さを感じさせます。
逮捕後の取り調べに対し、高橋正容疑者は法的に微妙な立ち位置を取っていると伝えられています。報道によれば、高橋正容疑者は「電話をかけた」という事実自体は認めているものの、「（脅迫した）内容は覚えていない」と供述し、容疑を一部否認しています。
犯行の動機はやはり「ホテル問題」か？
高橋正容疑者はなぜ、逮捕のリスクを冒してまで市長への脅迫電話をかけたのでしょうか。その動機は、捜査関係者への供述からはっきりと浮かび上がっています。
高橋正容疑者は、犯行の動機について「（小川市長の）一連の報道を含め市長の対応に不満があった」という趣旨の供述をしていると報じられています。
ここで重要なのは、高橋正容疑者が「ホテル問題」そのもの（＝不倫疑惑）だけに怒っていたのではない、という点です。高橋正容疑者の不満は、そのスキャンダルが発覚した後の小川晶さんの「対応」、すなわち市民への説明や責任の取り方にこそ向けられていました。
この「対応への不満」こそが、市民の怒りを買い、1万件以上の講義電話につながり、最終的に高橋正さんのような脅迫行為に至った核心的な理由と見られています。
高橋正容疑者の怒りを理解するためには、小川晶さんの「対応」を時系列で再検証する必要があります。
2025年9月下旬、小川晶さんが市職員である既婚男性とラブホテルで複数回密会していたことが報じられました。報道を受け、小川晶さんは9月24日夜に緊急記者会見を開き、ホテルに行った事実は認めました。しかし、その理由について「男女の関係はありません」と不倫関係を強く否定し、目的は「相談」や「打ち合わせ」であったと主張しました。
この「ホテルで打ち合わせ」という釈明が、市民の怒りに火を注いだ側面があります。メディアは、市長らが利用していたラブホテルが休憩3時間で5700円であり、その部屋の内部が「部屋の半分以上がベッド」「露天風呂つき」といった内装であったと報じました。
市民の目には、この釈明が「公然と嘘をついている」「市民を馬鹿にしている」と映り、スキャンダルそのものよりも、その「対応」の不誠実さへの怒りが増幅した可能性があります。
加えて、市議会の最大会派を含む7会派が市長に辞職して出直し選挙で民意を問うよう求めた一方で、小川晶さんは辞職を拒否し、「続投」する意向を表明しました。
その代わりとして、自らの「道義的責任」を取るとして、「任期中の給与を5割減額する」という処分を自らに課す方針を示しました。この「50%減給での続投」という対応もまた、「責任を取っていない」と考える市民の不満をさらに募らせる結果となったのかもしれません。
高橋正容疑者が叫んだ「責任取らねんかい」という言葉は、まさにこの一連の「対応」に対する市民の不満を代弁するものだったとも考えられます。
殺害予告に至るまでの経緯
今回の脅迫事件は、突発的に発生したものではありません。9月のスキャンダル発覚から11月の逮捕まで、市民の怒りが段階的にエスカレートし、最終的に一市民が犯罪行為に踏み切るまでの明確な「経緯」が存在します。
全ての発端は、9月24日に報じられた「ホテル問題」と、それに対する小川晶さんの記者会見です。前述の通り、この「ホテルで打ち合わせ」という釈明が、市民の間に「不誠実だ」という強い不信感を植え付けたと考えられます。
その結果、市長の釈明会見後、前橋市役所には市民からの電話が文字通り殺到しました。その数は、報道によると「1万件以上」に上るとされています。そのほとんどが市長の行動や対応に対する苦情や抗議であり、この「抗議の嵐」によって市役所の電話回線がパンク状態となり、通常の行政サービスにも支障が出かねない事態に陥りました。
この行政の麻痺状態を解消するため、小川晶さん側は対策を講じます。10月10日、市長の事務所に、この問題に関する市民からの電話を専門に受け付ける「コールセンター」を開設しました。これは、一般回線への影響を防ぎつつ、市民の不満や意見を受け止めるための危機管理対応の一環でした。
しかし、この危機管理対応が裏目に出る形となります。コールセンター設置からわずか1週間後の10月17日、高橋正容疑者がこのコールセンターに電話をかけ、「殺したくなっちゃったよ」と脅迫する事件が発生しました。
その後、10月26日に電話を受けた職員が小川晶さん本人に脅迫電話の内容を報告し、10月29日に小川晶さんが前橋署に被害届を提出。これにより、問題は「政治スキャンダル」から「刑事事件」へと移行しました。そして11月12日、警察が捜査を進め、高橋正容疑者が脅迫容疑で逮捕されるに至りました。
この流れは、市民の不満を吸収するために設置された「コールセンター」という仕組みが、結果として、最も過激な不満を持つ人物の「標的」となり、その声を市長本人に届けるルートとして機能してしまったという、皮肉な結末を示しています。
まとめ
前橋市長・小川晶さんへの脅迫事件で逮捕された高橋正容疑者（68）の動機は、単なるスキャンダルへの反発ではなく、その後の市長の「対応への不満」にあったと報じられています。
本事件の核心は、「ホテル問題」というスキャンダルそのものよりも、その後の危機対応にあったと言えるかもしれません。小川晶さんが「ラブホテルでの密会」を「打ち合わせ」と釈明したこと、そして「露天風呂つき」の部屋という客観的事実との乖離が、「市民を欺いている」という強い不信感を生み出した可能性があります。
この不信感は「1万件以上の抗議電話」という形で可視化され、行政を麻痺させました。市側が設置した「コールセンター」は、この怒りを鎮めるためのものでしたが、高橋正容疑者はこの窓口を通じて最も過激な不満を突きつけました。
この事件は、政治家が不祥事を起こした際、その「内容」以上に、その後の「説明責任の果たし方」や「対応の誠実さ」がいかに重要であるかを示しています。
市民の怒りは、不道徳な行為そのものよりも、不誠実な弁明によってこそ、予測不可能なレベルまで増幅する危険性があるのです。
高橋正容疑者の行為は決して許されるものではありませんが、その背景には、行政のトップに対する市民の信頼が根底から崩れたという、深刻な事態が存在していたことがうかがえます。
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