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2025年12月15日、京都地方裁判所で衝撃的な判決が言い渡されました。バトントワリング界で「カリスマ」として知られていた小城桂馬被告に対し、裁判所は懲役6年の実刑判決を下しました。
教え子である男子選手への準強制性交等などの罪に問われたこの裁判で、多くの人々が疑問に思ったのは「なぜ小城桂馬被告は、性的な行為自体を認めながらも無罪を主張したのか」という点ではないでしょうか。
また、小城桂馬被告の輝かしい経歴がどのように事件の背景に関わっていたのか、そして裁判所が厳しく断罪した「指導者と選手」のいびつな関係性について、公判の記録や報道などの情報を基に詳細に紐解いていきます。
【判決】小城桂馬被告に懲役6年の実刑判決|なぜ「無罪」を主張していたのか
2025年12月15日午後、京都地方裁判所において、準強制性交等などの罪に問われていた小城桂馬被告に対する判決公判が開かれました。
検察側は懲役7年を求刑していましたが、大寄淳裁判長が読み上げた判決は「懲役6年」の実刑でした。一般的に判決は求刑の7割から8割程度になることが多い中で、今回の判決は求刑に近い重い刑が選択されたと報じられています。
性的な行為は認めるも「合意だと思った」と主張
この裁判で最も注目されたのは、小城桂馬被告側の弁護戦略でした。小城桂馬被告は、2023年2月から3月にかけて被害者の男性に対してわいせつ行為や性的暴行を行ったという事実関係そのものについては認めていました。しかし、小城桂馬被告側は一貫して「無罪」を主張しました。その根拠として持ち出されたのが「同意誤信」という法的な論理です。
同意誤信とは、「客観的には同意がなかったとしても、加害者の主観としては相手が同意していると思い込んでいた」状態を指します。
日本の刑法において犯罪が成立するためには「故意」が必要であるため、小城桂馬被告側は「合意の上での行為だと信じていたので、犯罪の故意はない」と訴えたのです。
小城桂馬被告側は、被害者の方が事件後もチームに残り練習を続けていたことや、行為中に激しく抵抗しなかったことを挙げ、小城桂馬被告が合意があると誤解しても仕方がない状況だったと主張しました。
裁判所は「同意誤信」の主張を一蹴
これに対し、裁判所は小城桂馬被告側の主張を全面的に退けました。判決では、小城桂馬被告の「同意があったと信じていた」という弁解について「信用できない」と明確に否定しています。大寄淳裁判長は、指導者として尊敬してきた小城桂馬被告から被害を受けた被害者の方の精神的苦痛は甚大であると指摘しました。
裁判所の判断の背景には、圧倒的な力を持つ指導者の前で、立場の弱い選手が明確に拒絶の意思を示すことは極めて困難であるという理解があるようです。
被害者の方が抵抗しなかったのは同意していたからではなく、抵抗できない心理状態に置かれていたからだと認定されました。その結果、小城桂馬被告による犯行は、自身の性欲を満たすために信頼関係を悪用した卑劣なものであり、悪質性は高いと断じられました。
争点となった「抗拒不能」の真相と認定されたわいせつ行為の実態
本件裁判において、有罪判決の決定的な要因となったのが「抗拒不能」という概念の認定です。抗拒不能とは、暴行や脅迫がなくても、心理的または物理的に抵抗することが著しく困難な状態のことを指します。小城桂馬被告のケースでは、物理的な拘束ではなく、心理的な支配によって被害者の方がこの状態に陥らされていたと判断されました。
心理的支配が完成するまでのプロセス
裁判資料や報道によると、小城桂馬被告による犯行は段階的にエスカレートしていきました。最初の被害があったのは2023年2月26日とされています。
当時18歳だった被害者の方は、小城桂馬被告の自宅に呼び出され、突然体を押さえつけられてわいせつ行為を受けました。この時、被害者の方は「フリーズ反応」と呼ばれる状態に陥ったとみられています。
「練習剥奪」の恐怖による抗拒不能の成立
2月の行為によって形成された「逆らえない関係性」を利用し、小城桂馬被告はさらに被害者の方を追い詰めていきました。2023年3月、小城桂馬被告は再び被害者の方を自宅に呼び出し、性的暴行に及びました。この時、被害者の方は国際大会につながる重要な全国大会を目前に控えていました。
被害者の方は「断ったり親に言ったりすれば、チームの他の人にも迷惑がかかる。大会に出たかった」という葛藤の中にありました。小城桂馬被告はチームの全権を握る代表者であり、選手の起用や指導の可否を決める絶対的な権限を持っていました。過去に小城桂馬被告の機嫌を損ねた選手が冷遇される様子を見てきた被害者の方にとって、小城桂馬被告への拒絶は選手生命の終わりを意味していました。
検察側は、小城桂馬被告がこの「抵抗できない心理状態」に乗じて犯行に及んだと指摘しました。裁判所もこの主張を認め、暴力を用いて脅す必要すらなく、ただ指導者と選手という関係性を提示するだけで被害者の方を意のままに操っていたと認定しました。
これこそが、本件における抗拒不能の正体であり、見えない鎖による心理的な拘束だったと言えます。
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バトントワリング元指導者としての小城桂馬被告の経歴と人物像
小城桂馬被告がこれほどまでに強力な心理的支配を及ぼすことができた背景には、バトントワリング界における小城桂馬被告の突出した実績と地位がありました。小城桂馬被告は単なる一コーチではなく、業界を代表する「カリスマ」として認知されていたのです。
世界を知るトップアスリートとしての実績
小城桂馬被告のキャリアは、選手として非常に輝かしいものでした。特に立命館大学産業社会学部に在籍していた2006年(平成18年)の実績は特筆すべきものです。
小城桂馬被告は、WBTF(世界バトントワリング連合)が主催する「第2回WBTFインターナショナルカップ」の日本代表選手に選出されました。同年8月にイタリアのローマで開催されたこの大会に、小城桂馬被告は男子シニア部門の代表として出場しています。
当時の記録によると、小城桂馬被告は日本チームの主力として期待され、世界を舞台に活躍するトップアスリートとしての地位を確立しました。
京都の強豪チームでの絶対的な権力
現役引退後、小城桂馬被告は指導者の道へと進み、京都の強豪チームでコーチを務めたのち、代表の座に就きました。小城桂馬被告の指導は、自身が現役時代に培った世界レベルの技術に裏打ちされており、多くの選手や保護者から「小城桂馬被告に教われば上手くなる」「全国大会に行ける」と絶大な信頼を集めていました。
この成功体験が、チーム内における小城桂馬被告を中心とした強固なヒエラルキーを形成しました。被害者の方も3歳の頃から15年以上もの間、小城桂馬被告の指導を受けていました。被害者の方にとって小城桂馬被告は、技術を教わる師であり、精神的な支柱でもありました。
しかし、その長期にわたる信頼関係と尊敬の念が、小城桂馬被告にとっては「何をしても許される」という慢心に繋がり、被害者の方にとっては逃げ場のない檻となってしまったのです。
「指導者と教え子」の関係性を利用した悪質性と裁判所が下した判断
今回の判決で懲役6年という重い量刑が選択された大きな理由は、小城桂馬被告が「指導者と教え子」という構造的な力関係を悪用した点にあります。裁判所は、小城桂馬被告の行為の悪質性と、被害者の方が受けた被害の甚大さについて厳しく言及しました。
スポーツ指導の現場における構造的暴力
スポーツに打ち込む未成年の選手にとって、練習環境を奪われることは何よりも恐ろしいことです。小城桂馬被告のチームでは、反抗的な態度を取った選手に対し、練習を見ないなどの排除が行われることがあったと示唆されています。
被害者の方が小城桂馬被告に抵抗できなかったのは、小城桂馬被告の腕力が強かったからではなく、「拒絶すればバトンができなくなる」という将来への具体的な恐怖があったからです。
裁判所は、小城桂馬被告がこの力関係を熟知した上で、自身の欲望を満たすために利用した点を「指導者としてあるまじき卑劣な犯行」と捉えました。指導者が持つ評価権や人事権を性的な搾取の道具として使うことは、教育者としての最大の背信行為であると司法が判断した形です。
被害者の苦悩と信頼の崩壊
事件が被害者の方に残した傷は深く、長期にわたるものでした。報道によると、被害者の方は事件後、深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症しました。身体が拒絶反応を起こしてじんましんが出たり、不眠に悩まされたりする日々が続き、長期間にわたって部屋から出られない状態にあったといいます。
さらに残酷なことに、被害者の方が愛していたバトントワリングそのものがトラウマの引き金となってしまい、約1年半もの間、競技から離れざるを得なくなりました。
被害者の方は取材に対し、「尊敬していた自分が馬鹿だった」と語っています。小城桂馬被告に対するこの言葉は、信頼していた恩師に裏切られた絶望の深さを物語っています。また、本件は被害者が男性であるという点でも重要です。
社会的に「男性は抵抗できるはずだ」という偏見が存在する中で、被害者の方が声を上げるには相当な葛藤があったと推測されます。裁判所が性別に関わらず抗拒不能の状態を認め、実刑判決を下したことは、スポーツ界におけるハラスメント抑止の観点からも大きな意味を持ちます。
まとめ
本記事では、小城桂馬被告の裁判における「無罪主張」の理由と、その背景にある「抗拒不能」の実態について解説しました。
- 判決結果:京都地裁は小城桂馬被告に対し、求刑に近い懲役6年の実刑判決を言い渡しました。
- 無罪主張の理由:小城桂馬被告側は「同意があったと信じていた(同意誤信)」と主張しましたが、裁判所はこれを「信用できない」と退けました。
- 抗拒不能の認定:長年の師弟関係と「練習をさせない」という無言の圧力により、被害者の方が心理的に抵抗できない状態にあったと認定されました。
- 悪質性の判断:元日本代表というカリスマ的な地位と権力を利用し、未成年の選手を支配した構造的な暴力が厳しく断罪されました。
小城桂馬被告の事件は、スポーツ指導の現場における密室性や権力集中が、いかに深刻な人権侵害を生む可能性があるかを浮き彫りにしました。この判決が、同様の苦しみを持つ人々の救済と、健全なスポーツ環境の構築につながることが期待されます。
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