ダイビングや水族館でサンゴ礁を見ると、その色鮮やかさに心が奪われますよね。
「海の熱帯雨林」とも呼ばれ、息をのむような美しい景色を見せてくれます。
しかし、ふとこんな疑問が浮かびませんか?
「なぜサンゴ礁は、あんなにカラフルなんだろう?」
その美しい色は、ただの飾りではありません。
そこには、生き物のすごい生存戦略と、生命の神秘がぎゅっと詰まっているんです。
この記事では、「サンゴの色はなぜ?」というあなたの疑問に答えるため、色彩のひみつを、生物学の視点から楽しく、そして分かりやすく解き明かしていきます。
この記事を読み終わるころには、きっと見る目が変わり、一つ一つの色が持つ深い意味に感動するはずですよ。
サンゴの色の基本は「同居人」のおかげ?

基本的な色合いは、実はサンゴ自身の色ではないことが多いんです。
その色の正体は、体の中に住んでいる、とても小さな「同居人」に由来しています。
サンゴは動物!小さな「褐虫藻」と共同生活
多くの人がサンゴを植物だと思っているかもしれませんが、実はクラゲやイソギンチャクの仲間で、「動物」に分類されます。
そして、体の中には「褐虫藻(かっちゅうそう)」という、光合成をする小さな藻類がたくさん住んでいます。
この関係は「共生」と呼ばれ、お互いに助け合って、褐虫藻に安全な住処を提供しています。
そのお返しに、褐虫藻は光合成でつくった栄養をプレゼントしているのです。
栄養が少ない熱帯の海でサンゴ礁が大きく成長できるのは、この素晴らしい協力関係があるからなんですね。
褐虫藻の色素がサンゴの基本カラー
基本的な色をつくっているのが、この褐虫藻です。
褐虫藻は光合成のために、緑色に見える「クロロフィル」や、黄色から赤褐色に見える「カロテノイド」という色素を持っています。
これらの色素が組み合わさることで、多くのサンゴが持つ、茶色や黄色、緑色がかった独特の色合いが生まれるのです。
つまり、色の基本は、無数の小さな同居人である褐虫藻の色そのもの、というわけですね。
サンゴの色の種類が豊富な理由の一つに、この褐虫藻にも色々なタイプがいることが挙げられます。
どの褐虫藻と一緒に暮らすかによって、色合いも変わってくるんですよ。
サンゴ自身も輝く!宝石のような色素のひみつ

褐虫藻がくれる色は、主に茶色や緑といった落ち着いた色合いです。
しかし、私たちが海で見るサンゴには、もっと鮮やかな色がありますよね。
その色のひみつは、自身が体の中でつくりだす、特別なタンパク質にあるんです。
まるで天然の蛍光ペン?「蛍光タンパク質」のすごい役割
サンゴは、まるで蛍光ペンのように光る「蛍光タンパク質」というものをつくりだせます。
これは、太陽の光に含まれる紫外線などの強い光を吸収して、それを緑や赤といった、別の色の光として放出する性質を持っています。
このおかげで、強烈な緑色やオレンジ色にキラキラと輝いて見えるのです。
この輝きは、ただきれいなだけではありません。
サンゴにとっては「日焼け止め」のような大切な役割を果たしています。
強すぎる光から自分の体や、同居人の褐虫藻を守っているんですね。
青やピンクの立役者!「非蛍光性色素タンパク質」
サンゴは、蛍光を発しないタイプの色素も持っています。
美しい青色や紫色、かわいらしいピンク色などは、主にこちらの「非蛍光性色素タンパク質」によるものです。
これらの色素も、強すぎる光から体を守る役割があると考えられています。
サンゴは、褐虫藻からもらう色だけに頼るのではく、自分でも色々な色素をつくりだすことで、豊かで複雑な色彩を生み出しているのです。
色素だけではない?光のマジック「構造色」

自然界の美しい色は、実は色素が理由のすべてではありません。
「構造色」と呼ばれる、光が生み出す不思議な現象もあるんですよ。
これは、シャボン玉が虹色に見えるのと同じ原理です。
シャコガイのキラキラは「構造色」のおかげ
サンゴ礁の生き物で、この構造色の代表例が「シャコガイ」です。
シャコガイのキラキラと輝く玉虫色の青や緑は、色素の色ではありません。
体の表面にある、とても細かいギザギザの構造が光を反射することで、あのように美しく見えているのです。
サンゴ自身も構造色を使っているの?
では、サンゴもこの構造色を使っているのでしょうか。
今のところ、色の多くは、褐虫藻やサンゴ自身の色素によるものだと考えられています。
ですが、骨の細かい構造が、光の反射に影響して微妙な輝きを生んでいる可能性も研究されています。
サンゴ礁の色彩の奥深さを感じますね。
サンゴの色は変わる!環境が描く水中アート

サンゴの色は、実はいつも同じではありません。
住んでいる場所や季節によって、色合いが変わることがあるんです。
色彩は、まるで環境が描くアートのように、とてもダイナミックに変化します。
光のシャワーが色を変える
サンゴの色に最も大きな影響を与えるのが、光の環境です。
光がたくさん当たる浅い海では、日焼け止めになる色素をたくさんつくり、鮮やかな色になる傾向があります。
逆に、光が届きにくい深い場所では、弱い光でも大丈夫なように、体の色を調整しているのです。
水温や海の透明度も大切
光の環境に加えて、水温や海の透明度もサンゴの色に影響します。
例えば、陸から栄養が流れ込みすぎると、褐虫藻が増えすぎてサンゴが茶色っぽく見えてしまうことがあります。
生まれ持った「色の個性」
どんな色の色素をつくれるか、という能力は、サンゴが生まれ持った遺伝子によって決まります。
人間にも個性があるように、サンゴにも「色の個性」があるんですね。
つまり色は、生まれ持った個性をベースに、その時々の環境に合わせて柔軟に変化している、生命活動のしるしなのです。
色が消える…サンゴからのSOS「白化現象」

美しいサンゴ礁ですが、今、とても深刻な問題に直面しています。
それが、サンゴが真っ白になってしまう「白化現象」です。
これは、健康状態を知る上で、とても重要なサインになります。
なぜサンゴは真っ白になってしまうの?
白化は、強いストレスを感じたときに起こります。
最大の原因は、地球温暖化による海水温の上昇です。
水温が高くなりすぎると、サンゴは体の中に住んでいた同居人の褐虫藻を追い出してしまいます。
大切なパートナーを失い、栄養をもらえなくなったサンゴは、自身の白い骨が透けて、真っ白に見えてしまうのです。
白化が教えてくれるサンゴの色の本当の意味
白化したサンゴは、すぐに死んでしまうわけではありません。
海の環境が元に戻れば、また褐虫藻と暮らし始めて、色を取り戻すこともできます。
しかし、白い状態が長く続くと栄養不足で死んでしまいます。
普段、私たちが目にしているサンゴの美しい色は、サンゴと褐虫藻が健康に暮らしている証拠です。
色が消えてしまう白化現象は、サンゴ礁の生態系が危機に瀕していることを知らせる、地球からのSOSサインに他なりません。
まとめ:サンゴ礁の色彩は、生命の営みが奏でるシンフォニー

「なぜサンゴ礁はカラフルなのか?」という旅、いかがでしたか?
その答えは、決して一つではありませんでしたね。
サンゴの美しい色は、同居人の「褐虫藻」の色、自身がつくる「色素タンパク質」の色、そして光や水温といった「環境」との関わり合い、これらすべてが合わさって生まれる、まさに生命のシンフォニーなのです。
その美しさは、厳しい自然を生き抜くための知恵と工夫の結晶です。
次にあなたがサンゴ礁を見るときは、ぜひその一色一色に込められた物語を想像してみてください。
その色彩は、以前よりももっと深く、尊いものに見えるはずです。
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