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走行中のトラックやトレーラーを見て、「後ろのタイヤが地面から浮いているけれど、故障ではないの?」と驚いたことはありませんか。
一部のタイヤが浮いている場合、その多くは故障ではありません。「リフトアクスル」と呼ばれる装置が、使う必要のない車軸を意図的に持ち上げています。
リフトアクスルは、軽いときは少ない車軸で効率よく走り、重い荷物を積んだときは複数の車軸で重量を支えるための仕組みです。ここでは、トラックのタイヤが浮いている理由や車軸が上がる仕組み、タイヤを持ち上げる目的、故障との見分け方を紹介します。
トラックのタイヤが浮いているのはなぜ?
結論からいうと、トラックやトレーラーのタイヤが浮いているのは、リフトアクスルによって不要な車軸が持ち上げられているためです。
国土交通省の特殊車両通行確認システムでは、車軸自動昇降装置があるトレーラーを「リフトアクスルトレーラ」と表記しています。道路で見かける浮いたタイヤは、車軸自動昇降装置が正常に作動している状態であることが多いのです。
タイヤだけでなく車軸ごと持ち上がっている
見た目にはタイヤだけが宙に浮いているように見えますが、実際には左右のタイヤをつないでいる車軸ごと上昇しています。
車軸には、次のような部品が組み付けられています。
- 左右のタイヤ
- ホイール
- ブレーキ
- ハブ
- サスペンション関連部品
これらを含む車軸全体が持ち上がるため、左右のタイヤが同じように地面から離れます。
故障ではないことが多い
複数ある後輪のうち、1組だけが左右均等に持ち上がっている場合は、リフトアクスルが正常に作動している可能性が高いでしょう。
タイヤが外れかけていたり、サスペンションが壊れたりしているわけではありません。空荷や荷物が少ない状態では、すべての車軸を地面に接触させる必要がないため、自動的に一部の車軸を上げています。
ただし、左右どちらか一方だけが浮いている、車軸が斜めになっている、異音がするといった場合は、正常なリフトアクスルの動作とは異なる可能性があります。
リフトアクスルとは?
リフトアクスルとは、車両にかかる荷重に応じて、車軸を上げ下げする装置です。
日本語では、主に次のような名称で呼ばれます。
- リフトアクスル
- リフト軸
- リフトアクスル装置
- 車軸昇降装置
- 車軸自動昇降装置
呼び方は異なりますが、いずれも積載状態に応じて車軸を持ち上げたり、地面へ下ろしたりする仕組みを指します。
積載状態によって車軸が上がったり下がったりする
リフトアクスルの基本的な動作は、次のとおりです。
| 車両の状態 | リフトアクスルの動作 |
|---|---|
| 空荷 | 車軸が上がりやすい |
| 荷物が少ない軽積載 | 設定荷重以下なら上がる |
| 荷物が増えた | 車軸が下がる |
| 重い荷物を積んだ | 必要な車軸をすべて接地させる |
日本トレクスは、リフトアクスルトレーラーのリフト軸について、最後軸にかかる荷重によって上昇と下降が制御されると案内しています。
完全な空荷でなければ上がらないわけではありません。荷物を積んでいても、車軸を下ろす基準となる荷重に達していなければ、リフト軸が上がったままになる場合があります。
すべてのトラックに付いているわけではない
リフトアクスルは、すべてのトラックやトレーラーに装備されているわけではありません。
主に複数の車軸を持つ大型トレーラーやセミトレーラーなどに採用されています。日本トレクスでは、ウイングセミトレーラーや平床セミトレーラーなどに、リフトアクスルを装備した車両を設定しています。
車両の用途や積載量、サスペンションの種類によって、持ち上がる車軸の位置や数も異なります。
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実際にはトラックよりトレーラーで見かけることが多い
一般のドライバーから見ると、大型貨物車全体が「トラック」に見えるため、「トラックの後輪が浮いている」と検索されることが多いでしょう。
実際には、リフトアクスルを見かけることが多いのは、トラクターヘッドにけん引されるトレーラーの荷台側です。
トレーラーには複数の車軸が並んでおり、積載量が多いときは複数の車軸で荷重を支えます。一方、空荷や軽積載時には、そのうち1軸を持ち上げて走行することがあります。
トラックの後輪が浮いているように見える理由
トラクターヘッドとトレーラーが連結して走っていると、一般的には車両全体を1台のトラックとして認識します。
そのため、実際にはトレーラー側の車軸が上がっていても、「トラックの後輪が浮いている」「トラックのタイヤが持ち上がる」と表現されます。
検索するときは、次の言葉でも同じ仕組みの情報を探せます。
- トレーラーのタイヤが浮いている
- トレーラーの車軸が上がる
- トラックの後輪が浮いている
- 車軸自動昇降装置
- リフトアクスルとは
トレーラーの車軸が上がる仕組み
リフトアクスルは、主にエアサスペンションの空気圧や車軸にかかる荷重を利用して作動します。
車種や装置によって細かな構造は異なりますが、基本的な流れは次のとおりです。
- 車軸にかかっている荷重を検知する
- 設定された上昇・下降の基準と比較する
- 荷重が少なければリフト軸を上げる
- 荷重が増えればリフト軸を下げる
- 接地した複数の車軸で重量を分担する
エアサスペンションの圧力で積載状態を判断する
大型トレーラーには、空気を入れたエアバッグで車体を支えるエアサスペンションが多く採用されています。
荷物が増えるほど、車体を支えるために必要な空気圧も高くなります。リフトアクスルは、この圧力や車軸にかかる荷重をもとに、車軸を上げるか下げるかを判断します。
日本トレクスも、エアサスペンションリフトアクスルシステムの調整や点検を行う整備マニュアルを公開しています。
空気の力を使って車軸を持ち上げる
車軸を上げるときは、リフト用のエアスプリングなどに圧縮空気を送り、車軸を引き上げます。
エアサスペンションを備えたトレーラーでは、車両にもともと搭載されている圧縮空気の仕組みを利用できるため、積載状態に応じた自動昇降が可能です。
車軸が上がると、タイヤと路面の間に隙間ができ、走行中もタイヤが地面に触れない状態になります。
荷物が増えると自動的に下がる
荷物を積んで車両が重くなると、地面に接している車軸にかかる荷重が増えます。
荷重が下降の基準を超えると、持ち上げていた車軸を下ろし、タイヤを地面に接触させます。使用する車軸を増やすことで、車両と荷物の重量を分散する仕組みです。
設定される荷重や圧力は、車種や装置によって異なります。そのため、同じ量の荷物を積んでいても、すべてのトレーラーが同じように動作するとは限りません。
空荷のトラックがタイヤを持ち上げる目的
空荷や軽積載のトラック・トレーラーが車軸を持ち上げる目的は、主に走行時の無駄や部品の消耗を減らすことです。
主なメリットは次のとおりです。
| 目的 | 期待される効果 |
|---|---|
| タイヤの摩耗を抑える | 不要なタイヤを路面から離せる |
| 転がり抵抗を減らす | 接地するタイヤの本数を減らせる |
| 運行コストを抑える | 燃料やタイヤ交換費用の削減につながる |
| 曲がりやすくする | カーブでのタイヤの引きずりを減らせる |
| 車輪周辺の消耗を抑える | 不要な車輪の回転を減らせる |
タイヤの摩耗を抑えるため
タイヤは地面に接触して回転するほど摩耗します。
特に複数の車軸を持つトレーラーがカーブを曲がると、各車軸のタイヤが同じ軌道を通れないため、タイヤが路面を横方向にこする「引きずり」が発生します。
空荷や軽積載時に不要な車軸を上げれば、浮いているタイヤは路面と接触しません。BPWは、複数軸の車両で空荷または軽積載時に車軸を上げることで、タイヤを保護し、取り回しやすさを高められると説明しています。
なお、一般的な車のタイヤが黒い理由には、耐久性や紫外線への強さを高めるカーボンブラックが関係しています。詳しくは「車のタイヤはなぜ黒い?黒以外の色の可能性と寿命の秘密を解き明かす」で紹介しています。
走行抵抗や燃料消費を抑えるため
タイヤが路面を転がると、タイヤの変形や摩擦によって転がり抵抗が発生します。
接地するタイヤの本数を減らせば転がり抵抗も小さくなるため、燃料消費や運行コストの低減につながります。
日本トレクスは、リフトアクスルを空荷時の運行コストを抑える装備として紹介しています。また、SAF-HOLLANDもリフトアクスルについて、タイヤ摩耗の低減や燃費向上につながる装置と説明しています。
実際の効果は、車両の重量、走行距離、速度、道路状況などによって変わります。
カーブやバックで取り回しやすくするため
複数の車軸がすべて地面に接触していると、カーブを曲がるときにタイヤが路面を引きずりやすくなります。
一部の車軸を上げると、路面に接するタイヤが減るため、旋回時の抵抗を抑えられます。狭い物流施設での右左折やバックでも、車両を取り回しやすくなる場合があります。
ただし、どの車軸を持ち上げるかによって、車両の曲がり方や安定性は変わります。リフトする車軸の位置は、車両の設計に合わせて決められています。
車輪周辺の部品の消耗を抑えるため
地面から浮いたタイヤは、通常の走行中には回転しません。
タイヤだけでなく、ハブやベアリング、ブレーキなどの車輪周辺部品も使用される時間が減るため、部品の消耗を抑える効果が期待できます。
ただし、浮いている車軸も荷物を積んだときには使用されます。定期的な点検や整備が不要になるわけではありません。
車軸を上げると残ったタイヤの負担は増える
リフトアクスルで1軸を上げると、持ち上げた車軸が支えていた分の重量は、地面に接しているほかの車軸へ移ります。
たとえば、3本の車軸で支えていた重量を2本で支える状態になれば、接地している1軸あたりの負担は大きくなります。
そのため、リフトアクスルはいつでも自由に上げられるわけではありません。車両が軽く、残った車軸だけで重量を支えられる場合に限って上昇します。
荷物が増えたら下げる必要がある
荷物が増えた状態で車軸を上げたままにすると、接地している車軸へ重量が集中します。
東邦車輛では過去に、リフトアクスルの上昇・下降を開始する圧力値の設定が誤っていたため、非リフト軸が保安基準上の許容軸重を超えるおそれがあるとしてリコールを届け出た事例があります。
この事例からも分かるように、リフトアクスルには、不要な車軸を上げるだけでなく、荷重が増えたときに適切に下げる役割があります。
荷重を複数の車軸へ分散する
重量のある荷物を積んだときは、リフト軸を下ろし、接地するタイヤの本数を増やします。
これにより、車両と積み荷の重量を複数の車軸へ分散できます。各車軸にかかる負担を抑えながら、車両の重量を支える仕組みです。
つまり、リフトアクスルは次のように使い分けられています。
- 軽いとき:車軸を上げて効率よく走る
- 重いとき:車軸を下げて重量を分散する
空荷でなくてもタイヤが浮くことはある
トラックやトレーラーのタイヤは、完全な空荷でなければ浮かないわけではありません。
少量の荷物を積んでいても、リフト軸を下ろす基準となる荷重に達していなければ、車軸が上がったまま走行する場合があります。
BPWも、車軸リフトは空荷だけでなく、軽積載で走行するときにもタイヤを保護するために使用できると案内しています。
荷物の量だけでなく積む位置も関係する
リフトアクスルの動作には、荷物の総重量だけでなく、荷台のどこに積まれているかも関係します。
同じ重さの荷物でも、前方に積むか後方に積むかによって、各車軸にかかる荷重は変わります。
そのため、次のような違いが生じることがあります。
- 荷物を積んでいても車軸が上がっている
- 空に近くても車軸が下がっている
- 荷物を移動すると車軸が上下する
- 発進やブレーキの際に一時的に動作する
外から荷台を見ただけでは、車軸にどれだけの荷重がかかっているかは判断できません。
走行中にタイヤが上がったり下がったりするのは正常?
リフトアクスルは、走行中の荷重変化によって一時的に上昇・下降する場合があります。
荷重が変化しやすい場面には、次のようなものがあります。
- 発進したとき
- ブレーキをかけたとき
- 段差を通過したとき
- 坂道を走行したとき
- 荷物が荷台内で移動したとき
- 上昇・下降の設定値に近い荷重で走っているとき
日本トレクスは、走行中の振動や発進・制動時の荷重移動などによって車軸の荷重が変わり、リフト軸が予想外の動きをする場合があると案内しています。
そのため、走行中に一度タイヤが下がったり、停車後に再び上がったりしても、必ずしも故障とは限りません。
浮いているタイヤと故障を見分けるポイント
道路ですれ違った車両を外から見ただけで、正常か故障かを完全に判断することはできません。
ただし、リフトアクスルが正常に作動している場合には、一定の特徴があります。
リフトアクスルの可能性が高い状態
- 左右のタイヤが同じ高さまで上がっている
- タイヤと路面の間に均等な隙間がある
- 複数ある車軸のうち、1軸だけが浮いている
- 車体が左右に傾いていない
- 空荷または荷物が少ないように見える
- トレーラーが安定して走行している
左右のタイヤがそろって持ち上がっている場合は、意図的に車軸を上昇させている可能性が高いでしょう。
点検が必要な可能性がある状態
次のような状態では、リフトアクスルやサスペンションなどに不具合が起きている可能性があります。
- 左右どちらかのタイヤだけが浮いている
- 車軸やタイヤが斜めになっている
- 車体が左右に傾いている
- 空気が漏れるような音が続いている
- 上昇や下降を短時間に何度も繰り返す
- 重い荷物を積んでいるのに車軸が下がらない
- 警告灯が点灯している
- リフト装置付近から異音がする
リフトアクスルは圧縮空気や複数の部品を使う装置です。エア漏れ、部品の破損、圧力設定の異常などがあれば、正常に昇降できなくなる場合があります。
トラックの浮いているタイヤに関するよくある質問
タイヤを浮かせたまま走っても問題ない?
車両が軽く、リフトアクスルが正常に作動している状態であれば、タイヤを浮かせたまま走行することを前提に設計されています。
荷物が増えて設定荷重を超えると、通常はリフト軸が下降し、タイヤが地面に接触します。
荷物を積んでいてもタイヤが浮くことはある?
あります。
荷物を積んでいても軽積載で、リフト軸を下ろす基準となる荷重に達していなければ、車軸が上がったままになる場合があります。
動作する条件は、車種や装置の設定、荷物を積む位置によって異なります。
浮いているタイヤにもブレーキは付いている?
リフトされる車軸にも、通常はブレーキが備わっています。
車軸が下がってタイヤが接地すると、ほかの車軸とともに車両の重量を支え、走行や制動に使用されます。
なぜ前側や中央のタイヤだけが浮くの?
どの車軸を上げるかは、車両の設計や重量配分によって異なります。
前側の車軸を上げる車両もあれば、中央や後方の車軸を上げる車両もあります。曲がりやすさや荷重配分を考慮して、リフトする位置が設定されています。
空荷なのにタイヤが浮いていないのはなぜ?
主に次のような理由が考えられます。
- リフトアクスルを装備していない
- 車両自体の重量が上昇条件を満たしていない
- パレットや機材などを積んでいる
- 荷物や装備品の位置によって特定の車軸に荷重がかかっている
- 車両の仕様上、停車中や特定条件では上昇しない
- 装置が手動設定になっている
外から空に見えても、車両の内部や荷台には荷物や装備品が載っている場合があります。
トラックのタイヤを浮かせると燃費はよくなる?
接地するタイヤが減ると転がり抵抗が小さくなるため、燃料消費を抑える効果が期待できます。
ただし、実際の燃費は車両重量、速度、道路の勾配、渋滞、運転方法などにも左右されます。
運転手が自由に上げ下げしているの?
荷重やエアサスペンションの圧力に応じて、自動的に上昇・下降する車両があります。
車種によっては運転席や車両側のスイッチで一部の操作ができる場合もありますが、過度な軸重を防ぐため、荷重が増えると自動で下降する仕組みが採用されています。
トラックのタイヤが浮いている理由のまとめ
- トラックやトレーラーのタイヤが浮いているのは、リフトアクスルが作動しているため
- リフトアクスルは車軸自動昇降装置とも呼ばれる
- タイヤだけではなく、左右のタイヤをつなぐ車軸ごと持ち上がっている
- 実際にはトラック本体より、トレーラー側で見かけることが多い
- 空荷だけでなく、荷物が少ない軽積載時にも車軸が上がる場合がある
- 荷重やエアサスペンションの圧力をもとに上昇・下降する
- 車軸を上げると、接地しているほかの車軸へ重量が移る
- 荷物が増えたら車軸を下げ、複数の車軸で重量を分散する
- タイヤの摩耗や転がり抵抗を抑えることが主な目的
- カーブやバックでのタイヤの引きずりを減らす効果も期待できる
- 走行中の荷重移動によって、一時的に車軸が上下することがある
- 左右のタイヤが均等に浮いている場合は、故障ではない可能性が高い
- 片側だけ浮いている場合や、異音・エア漏れがある場合は点検が必要
- すべてのトラックやトレーラーに装備されているわけではない
道路でトラックの後輪が浮いているのを見かけたら、まずは故障ではなく、空荷や軽積載時の負担を減らすリフトアクスルが作動していると考えると、その理由を理解しやすくなります。
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