ギターのフレット間隔はなぜ高音側ほど狭い?音程が変わる仕組みを解説

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ギターの指板を見ると、ナットに近い低いフレットは間隔が広く、ボディに近い高音側へ進むほどフレット同士の間隔が狭くなっています。

フレット間隔が高音側ほど狭くなるのは、1フレット進むごとに同じ「半音」だけ音程を上げるには、弦を同じ長さずつではなく、残っている弦長に対して一定の割合で短くする必要があるためです。

弦は短くなるほど高い音を出します。ただし、半音上げるために必要な短縮量は毎回同じではありません。高音側ではすでに振動する弦が短くなっているので、次の半音へ進むために短くする距離も小さくなります。

この仕組みが分かると、「なぜフレットを等間隔に並べないのか」「なぜ12フレットが特別なのか」まで一続きで理解できます。

ギターのフレット間隔が高音側ほど狭くなる理由

ギターでは、基本的にボディ側へ1フレット進むごとに音程が半音ずつ高くなるようにフレットが配置されています。

この「半音ずつ」という音程関係を保つため、フレットは単純な等間隔にはできません。高音側になるほど、次の半音を作るために必要な弦長の変化量が小さくなるので、フレット間隔も徐々に狭くなります。

ヤマハも、半音上げるときの考え方を簡略化すると、振動している弦の長さを約0.944倍にすると説明しています。詳しくはヤマハ「フレットの間はなぜ狭まる?」でも確認できます。

1フレット進むごとに音程は半音ずつ高くなる

たとえば6弦を開放で鳴らした音が「ミ(E)」なら、1フレットを押さえると「ファ(F)」、2フレットでは「ファ♯(F♯)」、3フレットでは「ソ(G)」というように、1フレットごとに半音ずつ高くなります。

ギターでは、指で弦を押さえると弦がフレットに接触し、そのフレットからサドルまでの部分が主に振動します。ボディ側のフレットを押さえるほど振動できる弦が短くなるため、音程が高くなります。

半音や1オクターブ12音の並びを先に確認したい場合は、ピアノの黒鍵と半音の仕組みを解説した記事も参考になります。

高音側ほど半音上げるために短くする距離が小さくなる

ここで重要なのは、「半音上げるたびに10mm短くする」といった固定距離ではないことです。

次のフレットでは、その時点で残っている弦長を基準に、さらに一定の割合だけ短くします。元の弦が長い低音側では短くする距離も大きく、すでに弦が短い高音側では短縮する実際の距離が小さくなります。

たとえば、100という長さから毎回約94.4%にすると考えてみます。最初は約5.6短くなりますが、次は94.4を基準に計算するため、短くなる量は約5.3です。その次はさらに小さくなります。

ギターのフレットもこれと同じ考え方で並ぶため、ボディ側ほど間隔が詰まって見えるのです。

フレットを押さえるとなぜ音程が高くなる?

フレット間隔を理解するには、まず弦の長さと音の高さの関係を知っておくと分かりやすくなります。

フレットが弦の振動する長さを短くする

開放弦では、おおむねナットからサドルまでの長さを使って弦が振動します。

途中のフレットを押さえると、弦はそのフレットに触れます。そこが新しい支点になるため、実際に大きく振動する部分は「押さえたフレットからサドルまで」に短くなります。

ヤマハの弦と音の高さの解説でも、フレットがナットに代わる支点となり、振動する弦長が短くなることで音が高くなる仕組みが説明されています。

同じ弦なら振動部分が短いほど周波数が高くなる

音の高さは、振動の速さを表す「周波数」と関係しています。周波数が高いほど、高い音として聞こえます。

理想化した弦では、張力と弦の線密度が同じなら、基本周波数は振動する弦の長さに反比例します。

簡単にいえば、振動する長さを半分にすると基本周波数は2倍になるという関係です。弦の定常波については、大学向け物理教材のOpenStax「Standing Waves and Resonance」でも、基本周波数が弦長に反比例する関係を確認できます。

ギターでフレットを押さえると音程が上がるのは、この弦の物理的な性質を利用しているためです。

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フレットを等間隔に並べると半音ずつ上がらない

「1フレットで半音上がるなら、フレットを同じ間隔で並べればよいのでは?」と思うかもしれません。

しかし、音程は弦を何mm短くしたかではなく、元の周波数に対してどれくらいの比率で変化したかによって決まります。

音程は同じ距離ではなく同じ「比率」で変わる

仮にフレットを30mmずつの等間隔で並べたとします。

最初に648mmある弦から30mmを引くのと、残りが400mmしかない状態から30mmを引くのとでは、元の長さに対する変化の割合が違います。

648mmから30mm短くするのは約4.6%の変化ですが、400mmから30mm短くすると7.5%もの変化になります。そのため、同じ30mmでも高音側ほど音程の変化が大きくなってしまいます。

半音ずつ均等に音程を上げるには、距離ではなく比率をそろえる必要があります。

12平均律では半音上がるごとに周波数が約1.059倍になる

一般的な現代のギターでは、フレットは12平均律を基準に配置されています。

12平均律では、1オクターブを12個の同じ比率の半音に分けます。1オクターブ高い音は周波数が2倍になるため、半音1つ分の周波数比は次のようになります。

21/12 ≒ 1.059463

つまり、1フレット進むたびに周波数は約1.05946倍です。

周波数と弦長が反比例すると考えると、必要な振動弦長はその逆数となり、1フレット進むたびに約0.94387倍になります。

毎回「同じ長さ」を引くのではなく、残った弦を約94.4%の長さにしていくため、フレット間隔は少しずつ狭くなります。

12平均律で半音の周波数比が21/12になる関係は、ニューサウスウェールズ大学の音名と周波数の解説でも確認できます。

なお、カラオケなどで「キーを1つ上げる」と音全体が半音上がる仕組みについては、曲のキーとキー変更の仕組みを解説した記事で詳しく紹介しています。

12フレットがスケール長の半分になる理由

ギターでは12フレットにダブルドットなどの目印が付いていることが多く、演奏上も分かりやすい区切りになっています。

12フレットが特別なのは見た目だけではありません。音程と弦長の関係から見ても、はっきりした意味があります。

12半音上がると1オクターブ高くなる

1フレットで半音上がるため、12フレット進むと合計12半音上がります。

12半音はちょうど1オクターブです。そのため、開放弦が「ミ」なら12フレットも1オクターブ高い「ミ」、開放弦が「ラ」なら12フレットも1オクターブ高い「ラ」になります。

1オクターブ上では周波数が2倍、必要な弦長は半分になる

1オクターブ高い音は、元の音の2倍の周波数です。

同じ弦で張力などの条件が変わらない理想的な状態なら、周波数を2倍にするには振動する弦長を半分にすればよいことになります。

そのため、理論上、ナットから12フレットまでの距離はスケール長の半分になります。

たとえばスケール長が648mmなら、12フレットはナットから324mmの位置です。12フレットを押さえれば、そこから理論上のサドル位置までの振動長も324mmとなります。

これは偶然ではなく、「12回半音を上げると周波数が2倍になる」という音律と、「弦長を半分にすると周波数が2倍になる」という弦振動の関係が一致した結果です。

実際にフレット間隔はどれくらい狭くなる?

数字で比べると、高音側へ進むほどフレット間隔が狭くなる様子が分かりやすくなります。

648mmスケールを例にフレット位置を比べる

理論上のスケール長を648mmと仮定し、12平均律でフレット位置を計算すると次のようになります。数値は分かりやすいよう小数第1位まで丸めています。

フレットナットからの位置直前フレットとの間隔
1約36.4mm約36.4mm
2約70.7mm約34.3mm
3約103.1mm約32.4mm
6約189.8mm約27.2mm
9約262.7mm約22.9mm
12324.0mm約19.3mm

1フレット目ではナットから約36.4mmありますが、11フレットから12フレットまでの間隔は約19.3mmです。同じ半音の差なのに、実際の距離は約半分近くまで小さくなっています。

フレット位置をナットからの距離で表す場合は、理論上、次の関係で求められます。

nフレットまでの距離 = スケール長 ×(1 − 2−n/12

数式を覚える必要はありませんが、「各フレットで同じmm数を引いているのではない」という点を理解するには役立ちます。

スケール長が違ってもフレットが狭くなる割合の考え方は同じ

ギターによってスケール長は異なるため、フレット間の実際のmm数も変わります。

スケールが長いギターでは全体的にフレット間隔も広くなり、短いギターでは狭くなります。しかし、12平均律を基準にしているなら、1フレットごとに必要な振動弦長が約0.94387倍になるという比率は共通です。

そのため、スケール長が違っても「高音側ほど徐々にフレット間隔が狭くなる」という形そのものは変わりません。

理論どおりのフレット位置でも音程調整が必要な理由

ここまでの説明だけを見ると、「正確に計算してフレットを置けば、どの音も完全に合うのでは?」という疑問が出てきます。

ところが実際のギターでは、理論上の単純な弦とは条件が異なるため、ブリッジ側で音程の補正が行われます。

弦を押さえると張力もわずかに変化する

フレットを押さえるとき、弦は真っすぐ横方向に短くなるだけではありません。指板方向へ押し下げられるため、わずかに引き伸ばされます。

弦が伸びれば張力も変わり、理想的な「弦長だけが変化した場合」とは音程に差が生じます。さらに、弦の太さや硬さ、弦高なども実際のイントネーションに影響します。

このため、ヤマハもフレット位置について、約0.944倍という値は理論上の簡略化であり、実際には張力補正など複数の要素が関係すると説明しています。

サドルを動かすオクターブ調整で実際の音程を補正する

エレキギターなどでは、ブリッジのサドルを前後に動かし、実際に振動する弦長をわずかに調整できる構造が一般的です。この作業はイントネーション調整やオクターブ調整と呼ばれます。

代表的な確認方法では、12フレットを押さえて出した実音と12フレットのハーモニクスを比較します。Fenderもギターのイントネーション調整方法で、この2つの音程を基準にサドル位置を調整する方法を案内しています。

そのため、実物のギターではサドルがすべて完全な一直線に並んでいるとは限りません。弦ごとに必要な補正量が異なるためです。

フレット間隔が高音側ほど狭い最大の理由は、半音を同じ比率で積み重ねるためです。弦が短くなるほど同じ半音を上げるために必要な短縮距離も小さくなるので、フレットはボディ側へ向かうほど徐々に詰まっていきます。

ギターの指板は、見た目の弾きやすさだけでこの形になっているのではありません。弦の振動と音程、1オクターブ12半音という音楽の仕組みが、そのままフレットの配置として表れているのです。

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