レコードの仕組み|溝と針からスピーカーまで音が出る流れをやさしく解説

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レコード盤に針を置くと、細い溝をなぞっているだけなのに歌声や楽器の音が聞こえてきます。見た目だけでは「この溝のどこに音楽が入っているの?」と不思議に感じるかもしれません。

レコードは、音を表す変化を細かな溝の形として記録し、その形を針の振動として読み取る仕組みです。針の動きはカートリッジで電気信号に変わり、フォノイコライザーやアンプを通ったあと、スピーカーが空気を振動させることで私たちの耳に音楽として届きます。

この記事では、レコードの溝からスピーカーまでを順番にたどりながら、1本の溝でステレオ再生できる理由や、そもそも音楽をどうやって溝へ刻んでいるのかまで解説します。

目次

レコードは「溝の形を針で読み取る」ことで音を再生する

レコード再生の仕組みを理解するには、まず音が出るまでの流れを一本につなげて見ると分かりやすくなります。

レコード盤だけで音を大きくしているわけでも、針そのものがスピーカーのように鳴っているわけでもありません。溝に記録された情報を、いくつかの部品が順番に別の形へ変換しています。

音が出るまでを「溝→針→電気信号→スピーカー」で見る

段階起きること主な部分
1音を表す細かな形を読み取るレコードの溝
2溝の形に合わせて振動する針・カンチレバー
3振動を電気信号へ変えるカートリッジ
4信号を補正して大きくするフォノイコライザー・アンプ
5電気信号を空気の振動へ戻すスピーカー

オーディオテクニカも、レコードの音溝を針がなぞることで生じる小さな振動をカートリッジで電気信号へ変換し、アンプで増幅して音を再生する仕組みを解説しています。基本原理はオーディオテクニカ「レコードのしくみ」でも確認できます。

この流れで大切なのは、レコードは物理的な溝を直接なぞって情報を読み取るという点です。CDや音楽配信のように、最初からデジタルデータを読み出して再生する方式とは根本的な部分が異なります。

厳密には「針を置くだけ」で大きな音が出ているわけではない

「レコードは針を置くだけで音が出る」と表現されることがありますが、現在一般的なレコードプレーヤーでは、針の後ろで電気的な増幅が行われています。

針の振動は非常に小さいため、それだけで部屋いっぱいに音楽を響かせることはできません。カートリッジで振動を電気へ変え、その小さな信号を十分に増幅して、最後にスピーカーを動かします。

フォノイコライザーやアンプを内蔵したレコードプレーヤーでは、この処理が本体の中で行われるため、利用者から見ると「針を下ろしただけで鳴った」ように見えます。

一方、電気を使わなかった昔の蓄音機では、針の振動を振動板へ伝え、ホーンで機械的に音を大きくしていました。方式は違っても、最初に溝の形が針を振動させるという部分は共通しています。

レコードの溝には何が記録されている?

レコードの盤面をよく見ると、外側から内側へ向かって非常に細い溝が続いています。この溝は単なる目印ではなく、音楽を再生するための情報そのものです。

ただし、「音そのものが溝の中に入っている」と考えると少し誤解があります。空気中を伝わる音を、そのまま物体として収納しているわけではありません。

音の変化が細かな溝の形として連続的に記録されている

声や楽器から出た音は空気を振動させ、その振動をマイクが電気信号へ変換します。録音やミックス、マスタリングを経て作られた音楽信号を使い、レコード制作時にはカッティングマシンの針を動かして原盤へ溝を刻みます。

そのためレコードの溝には、音を表す信号の変化に対応した細かな凹凸や揺れが連続しています。

再生するときは、その逆です。回転するレコードの溝へ針先を接触させると、針は細かな形の変化に従って動きます。この動きから元の音楽信号に対応する変化を取り出していきます。

レコードが「アナログ」と呼ばれるのは、このように音を表す連続的な変化を、物理的な溝の変化として扱っているためです。

歌や楽器が重なった音も一つの複雑な信号として記録できる

「1本の溝しかないのに、どうしてボーカル、ギター、ベース、ドラムなどを同時に再生できるのか」という疑問も出てきます。

それぞれの楽器専用の溝が並んでいるわけではありません。複数の音は録音・ミックスの段階で重なり合い、左右それぞれのチャンネルについて一つの複雑な音楽信号になります。

私たちが普段聞く空気の振動も同じです。ギターと歌声が同時に鳴っていても、耳へ届く空気が「ギター用」と「歌声用」に分かれているわけではありません。複数の振動が重なった複雑な波として届き、耳や脳がそれぞれの音として認識しています。

レコードも、複数の音が合成された信号の変化を溝へ記録し、再生時にその変化をまとめて読み取っています。

ステレオ盤はV字型の両壁に左右の音を記録する

一般的なステレオレコードでは、1本の溝で左チャンネルと右チャンネルの両方を扱います。

代表的なのが45-45方式です。レコードの溝を断面から見るとV字型になっており、盤面に対して左右45度に傾いたそれぞれの溝壁へ、LチャンネルとRチャンネルの情報を記録します。

そのため、ステレオ盤を再生している針は単純に左右だけへ振れているわけではありません。左右のチャンネルに記録された内容に応じて、上下方向と左右方向を組み合わせた非常に細かな動きをします。

1本の溝しか見えないのに左右のスピーカーから違う音が聞こえるのは、V字型の溝の両側を利用して2チャンネルを記録しているためです。45-45方式についてはオーディオテクニカの「レコードの溝」でも図を交えて解説されています。

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針が溝をなぞると、なぜ電気信号になる?

溝の形に合わせて針が振動するだけでは、まだスピーカーへ送れる電気信号にはなっていません。

ここで働くのが、トーンアームの先端に付いているカートリッジです。

針先の振動はカンチレバーを通してカートリッジへ伝わる

一般的なレコード針では、実際に溝へ触れる先端部分をスタイラスチップと呼びます。現在の多くのカートリッジでは、非常に硬いダイヤモンドが針先として使われています。

その針先を支えている細い棒状の部品がカンチレバーです。

レコードが回転すると、針先が溝の細かな形状を追いかけ、その動きがカンチレバーへ伝わります。カンチレバーの反対側には発電機構があり、ここで機械的な振動を電気信号へ変換します。

針先が溝をどれだけ正確に追えるかは再生にとって重要です。溝の細かな変化をうまく追従できなければ、本来記録された信号を正しく取り出せなくなります。

磁石とコイルの動きで振動を電気信号へ変換する

多くのカートリッジでは、磁石とコイルを利用した電磁誘導によって電気信号を作ります。

簡単にいえば、磁石とコイルの位置関係が変化すると、コイルに電圧が生じるという仕組みです。

溝によって針先が動くとカンチレバーも動き、その動きを利用して磁石またはコイルを振動させます。溝の細かな変化に合わせて発生する電圧も変化するため、針の機械的な振動を音楽に対応した電気信号へ変えられます。

針が「音を読んでいる」というより、より正確には溝によって生じた機械的な動きを、カートリッジが電気信号へ変換していると考えると分かりやすいでしょう。

MM型とMC型は「磁石とコイルのどちらが動くか」が違う

代表的なカートリッジには、MM型とMC型があります。どちらも磁石とコイルを利用しますが、主に動く部分が異なります。

方式主に動く部分固定される側
MM型磁石コイル
MC型コイル磁石

MMは「Moving Magnet」、MCは「Moving Coil」の略です。

MM型ではカンチレバー側の磁石が動き、近くに固定されたコイルへ電圧を発生させます。MC型では逆にコイル側が動き、固定された磁石の磁界の中で電圧を発生させます。

方式によって出力電圧や構造などに違いはありますが、この記事で押さえておきたいのは、どちらも針の振動を電気信号へ変えるための仕組みだという点です。

小さな電気信号がスピーカーから音楽になるまで

カートリッジが電気信号を作った時点でも、まだ家庭で聞く音量の音楽にはなりません。

カートリッジが発生させる信号は小さく、さらにレコード特有の周波数補正を元へ戻す必要があります。

カートリッジから出る信号はそのままでは非常に小さい

オーディオテクニカの解説では、一般的な出力電圧の例として、MM型やVM型では3~10mV程度、MC型では0.1~0.5mV程度が挙げられています。

mVはミリボルトで、1Vの1000分の1です。カートリッジは、溝から拾った小さな機械振動だけを使って発電するため、最初に得られる電気信号も非常に小さくなります。

この信号をそのまま一般的なライン入力へ送っても、十分な音量にならなかったり、正しい音質で再生できなかったりします。

フォノイコライザーが音量と周波数バランスを整える

そこで使われるのがフォノイコライザーです。主な役割は、カートリッジから出た小さな信号を増幅することと、レコードへ記録するときに変更された周波数バランスを元へ戻すことです。

レコードは、録音した音をそのまま同じバランスで溝へ刻んでいるわけではありません。

低い音をそのまま大きな振幅で記録すると溝が大きく左右へ振れ、広いスペースが必要になります。反対に高音域では、盤面や針に由来するノイズが目立ちやすくなります。

そこで一般的なレコードでは、カッティング時に低音を抑え、高音を強める周波数特性を使います。再生するときにはフォノイコライザーで反対の補正を行い、元のバランスへ戻します。

「レコードに刻まれた信号を大きくする」だけでなく、「記録時の周波数補正を元へ戻す」のもフォノイコライザーの大切な役割です。

現在一般的なレコードで使われている基準がRIAAカーブです。詳しい仕組みはオーディオテクニカのフォノイコライザー解説でも確認できます。

なお、フォノイコライザーは必ず独立した箱として置かれているとは限りません。レコードプレーヤーやプリメインアンプなどに内蔵されている機種もあります。

アンプで増幅した信号がスピーカーを振動させる

フォノイコライザーで適切な信号に整えたあと、さらにアンプでスピーカーを動かせる大きさまで増幅します。

スピーカーへ電気信号が送られると、内部の振動板が前後に動きます。この動きが周囲の空気を振動させ、その振動が耳へ届くことで再び「音」になります。

流れを逆から見ると、録音時には空気の振動→電気信号へ変え、レコードではさらに電気信号→溝の形へ変えています。再生時には溝の形→針の振動→電気信号→空気の振動とたどって元へ戻しているわけです。

そもそも音楽はどうやってレコードの溝へ刻まれる?

再生の仕組みが分かると、次に気になるのが「その細かな溝をどうやって作るのか」です。

市販されるレコードを1枚ずつ録音しながら削っているわけではありません。まず音楽を刻んだ原盤を作り、そこから量産用の金型を作ってレコードへ溝を転写します。

録音した音楽信号でカッティング針を動かして原盤を作る

レコード制作では、完成した音源をカッティングマシンへ送り、その電気信号に合わせてカッティング針を動かします。

カッティング針が回転する原盤の表面へ細かな溝を刻むことで、音楽信号の変化が物理的な形へ変換されます。

現在の製造では、ラッカー盤へ溝を切る方法のほか、銅板へ直接溝を刻むDMM(Direct Metal Mastering)が使われる場合もあります。

レコードプレス工場のRecord Industryも、マスター音源をカッティング旋盤へ送り、ラッカーまたは銅板へ溝を刻む工程を製造工程の公式ページで公開しています。

原盤からスタンパーを作り、同じ溝をレコードへ複製する

カッティングした原盤そのものを店頭で販売するわけではありません。

一般的なラッカー方式では、溝を刻んだ原盤へ金属の層を形成し、電鋳と呼ばれる工程を利用して金属製の型を作ります。工程を経て、最終的にレコードをプレスするためのスタンパーが作られます。

スタンパーには音溝と反対形状の凹凸があり、加熱して柔らかくしたレコード材料を高い圧力で挟むことで、表面へ同じ溝を転写できます。

これによって、同じ録音内容を持つレコードを何枚も製造できます。工場や採用する製法によって細かな工程は異なりますが、音源から原盤を作り、その形を金型で複製するという流れが基本です。

再生はカッティングとは逆向きの変換と考えると分かりやすい

レコードの仕組みは、記録と再生をセットで考えると理解しやすくなります。

  • 記録時:音楽の電気信号でカッティング針を動かし、溝を作る
  • 再生時:できあがった溝でレコード針を動かし、電気信号を作る

記録するときは「電気→動き→溝」、再生するときは「溝→動き→電気」と、途中の変換が反対向きになっています。

レコードへ音が魔法のように閉じ込められているのではなく、音を表す変化を物理的な形へ変え、その形から再び変化を取り出しているのです。

傷やホコリ、回転速度で音が変わるのも溝を直接読むから

レコードを聴いていると、ホコリでノイズが増えたり、回転速度がずれると音程まで変わったりします。

これらも、レコードが物理的な溝を針で直接読み取る仕組みだと分かれば理由を説明できます。

傷やホコリは針の動きそのものへ影響する

針は、音楽として記録された細かな溝の変化を追いかけています。

ところが盤面にホコリが付いていると、針は本来の音溝だけではなく、その異物の凹凸にも反応します。不要な動きまで電気信号へ変換されるため、「チリッ」「パチッ」といったノイズとして聞こえる場合があります。

オーディオテクニカも、レコード再生時のスクラッチノイズについて、盤面のホコリや静電気を主な原因として挙げています。

深い傷がある場合も同様です。溝の形が本来とは違う状態になるため、針が突然大きく動いたり、同じ部分へ戻ったりして、ノイズや音飛びにつながることがあります。

回転速度が変わると同じ溝を読む速さが変わる

LPでは33 1/3回転/分、EPなどでは45回転/分が代表的な回転速度です。プレーヤー側の設定を間違えると、音楽は本来と違う速さで再生されます。

例えば、本来45回転/分で再生する盤を33 1/3回転/分で回せば、針が溝の変化を読み取る速度も遅くなります。その結果、テンポが遅くなるだけでなく、音程も低く聞こえます。

逆に回転が本来より速ければ、テンポも音程も高くなります。

これはデジタルデータの再生速度を単純に変える場合と似ていますが、レコードでは盤そのものを物理的に読む速さが変化しているという点が特徴です。

針圧や針先の状態も正確なトレースに関係する

針を溝へ接触させる力を針圧と呼びます。針圧は強ければよいわけでも、弱ければよいわけでもありません。

弱すぎると針が溝を安定して追えず、音がひずんだり針飛びしたりする場合があります。一方、必要以上に強い針圧をかけると、カンチレバーやレコード盤へ余計な負担をかけるおそれがあります。

そのため、カートリッジごとに指定された適正な針圧へ調整することが大切です。針先に付着したホコリや針先の状態も、細かな溝を正しく追う能力に影響します。

レコードの音は、盤の表面に刻まれた非常に細かな形を機械的に読み取るところから始まります。だからこそ、盤面の状態、針、カートリッジ、回転の正確さといった物理的な条件が、そのまま再生音へ表れます。

溝が針を動かし、針の振動を電気へ変え、最後にスピーカーが再び空気を振動させる。この一連の変換が、レコードに針を置くだけで音楽が聞こえてくるように見える仕組みです。

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