ト音記号はなぜあの形?Gが変化した由来と「ソ」の位置を示す理由

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楽譜の最初にある「ト音記号」は、くるりと曲がった独特な形をしています。音楽に慣れていると見過ごしがちですが、「なぜこんな形なの?」「何を表している記号なの?」と考えると、不思議な形です。

ト音記号の形のもとになったのは、音名の「G」を表す文字です。昔、五線の基準となる音を文字で示していたものが、長い時間をかけて様式化され、現在のト音記号につながりました。

さらに、現在のト音記号は五線の下から第2線を「G=ソ=日本音名のト」と定める役割を持っています。形の由来と「ソの位置を示す」という働きは、どちらもGという音でつながっているのです。

ト音記号はなぜあの形?もとは「G」の文字

ト音記号を見て、すぐにアルファベットのGを思い浮かべる人は少ないでしょう。しかし、現在の複雑な曲線は、もともとGの文字を使って音の位置を示していたことに由来します。

昔の音部記号は基準となる音を文字で示していた

現在の五線譜では、楽譜の左端にト音記号やヘ音記号が置かれています。これらは「音部記号」と呼ばれ、五線上のどこに何の高さの音があるのかを決めるための記号です。

音部記号の歴史をさかのぼると、中世には五線の基準となる線の音をCやFなどの文字で示す方法が使われていました。Open Universityの音楽理論教材では、11世紀以降にCやFなどのローマ字が音部記号として体系的に使われ、のちにGも広く使われるようになったと説明されています。

五線に音符だけを書いても、「この線を何の音とするか」という基準がなければ、具体的な音の高さは決まりません。そこで、特定の線にC・F・Gなどの文字を置き、基準を示したわけです。

Gが様式化されて現在のト音記号につながった

Gを表す文字も、手書きで楽譜が作られていた時代の書き方や装飾の影響を受けながら変化していきました。そのため、現在のト音記号は普通に書いた「G」とはかなり違った形をしています。

ただし、「ある年にGが突然現在のト音記号へ変わった」というものではありません。手書きの記譜では時代や書き手によって形に違いがあり、それらが徐々に様式化・標準化されて現在の記号につながっています。

ヤマハの「楽譜の読み方」でも、ト音記号は「Gの文字を記号化したデザイン」と説明されています。

「ト音記号」の「ト」はソのこと

ここで疑問になるのが、「Gがもとなのに、なぜG音記号ではなくト音記号と呼ぶの?」という点です。

これは、同じ音でも使う音名の体系によって呼び方が変わるためです。

ドレミ・CDEFGAB・ハニホヘトイロは同じ音を違う名前で呼んでいる

日本で日常的に使われる「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」はイタリア語式の音名です。一方、コードネームなどではC・D・E・F・G・A・Bという英語式の音名もよく使われます。

さらに、日本語式では「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」と呼びます。対応関係を並べると、次のようになります。

イタリア語式英語式日本語式
C
D
E
ファF
G
A
B

つまり、「ソ」「G」「ト」は、音名の付け方が違うだけで同じ音を指しています。

ト=ソ=Gだから名称とG由来の形がつながる

日本語ではGにあたる音を「ト」と呼ぶため、Gの位置を示す音部記号が「ト音記号」と呼ばれます。

そのため、「Gの文字がもとになった」という形の由来と、「ト音記号」という日本語名は別々の話ではありません。どちらも同じ音を指しています。

G=ソ=トと覚えると、ト音記号の形・名前・役割をまとめて理解できます。

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なぜト音記号は第2線の「ソ」を示すの?

現在よく使われているト音記号を見ると、下側の渦が五線の下から第2線を取り囲むように描かれています。この第2線がG、つまり「ソ」です。

ここで大切なのは、第2線がもともとソなのではなく、ト音記号を置くことで第2線がソになるという点です。

五線だけではどの線が何の音なのか決まらない

五線には5本の線と、その間に4つのスペースがあります。音符を高い位置へ書けば相対的に高い音、低い位置へ書けば低い音であることは表せますが、五線だけでは「第2線はソ」といった具体的な音名までは決まりません。

そこで必要になるのが音部記号です。どこか1か所の音を基準として指定すれば、その上下の音も順番に決められます。

これは地図で基準となる地点が1つ分かれば、そこから周囲の位置関係を読み取れるのと似ています。

現代のト音記号は第2線を中央ドより上のGに定める

現在一般的に使われるト音記号では、五線を下から数えた第2線がGになります。

このGは、ピアノでいう中央のド(中央C)より上にあるGです。中央のドからド・レ・ミ・ファ・ソと上がったところにあるソが、第2線に対応します。

Open Universityの音楽理論教材でも、ト音記号(G clef)は下から第2線を、中央Cより上にあるGとして示す記号と説明されています。

1つの基準音が決まれば残りの音も順番に決まる

第2線がソだと分かれば、そのすぐ上の第2間はラ、その上の第3線はシ、その上の第3間はドというように、音名を順番にたどれます。

反対に第2線から下へ進めば、第1間がファ、第1線がミとなります。

  • 第1線:ミ
  • 第1間:ファ
  • 第2線:ソ
  • 第2間:ラ
  • 第3線:シ

このように、ト音記号は一つ一つの音を個別に示しているわけではありません。Gの位置を1か所決めることで、五線全体の音の配置を決めているのです。

ト音記号の形を見ると「ソ」の位置を見つけられる

ト音記号の由来を知ると、あの複雑な形が譜読みの目印としても使えることが分かります。

渦の中心が囲んでいる第2線がソ

ト音記号の下側には丸く巻いた部分があります。その中心付近を通っている線が、下から第2線です。

そこがG=ソの位置なので、楽譜で音の場所が分からなくなったときは、まずト音記号が囲んでいる第2線のソを探すと基準を作れます。

「ト音記号は音楽らしい飾り」と考えるよりも、Gの線を指し示している記号と考えたほうが、その形の意味を理解しやすくなります。

第2線のソと真ん中のドを結び付けると譜読みしやすい

ト音記号で使われる中央のドは、五線のすぐ下に短い加線を1本引いて、その線上に書きます。

そこから上へ「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と数えると、第2線のソまでたどり着きます。逆に第2線のソを覚えておけば、そこから上下へ音名を数えることもできます。

ピアノで楽譜と鍵盤の位置を結び付ける場合は、鍵盤上のドを見つけられるようになると理解しやすくなります。鍵盤の並び方については、ピアノの黒鍵がなぜ2つと3つに分かれているのかを解説した記事でも詳しく紹介しています。

G clefは昔から必ず第2線にあったわけではない

現在の楽譜を見慣れていると、「ト音記号=第2線のソ」は最初から決まっていたように感じます。しかし、Gを基準にする音部記号が歴史上ずっと現在と同じ位置に置かれていたわけではありません。

歴史上は第1線にGを置く音部記号も使われた

17〜18世紀のフランスでは、G音部記号を五線の一番下、つまり第1線に置く記譜法も使われていました。「フレンチ・ヴァイオリン・クレフ(French violin clef)」などと呼ばれるものです。

この場合は第1線がGになります。現在一般的なト音記号では第2線がGなので、同じG音部記号でも置く位置によって五線上の音名配置が変わります。

この歴史を知ると、「なぜ自然界の法則として第2線がソなのか」と考える必要がないことも分かります。第2線をGとする配置が、現在一般的なト音記号として定着しているのです。

現在一般的なト音記号は「第2線のG clef」

英語ではト音記号を「treble clef」と呼びます。また、Gの位置を示すことから「G clef」とも呼ばれます。

厳密に歴史まで含めて考えると、「G clef」という言葉はGを基準にする音部記号を表し、Gをどの線に置くかには複数の例がありました。その中で、現在広く使われている第2線G clefが、一般に目にするト音記号です。

そのため、ト音記号の渦が第2線を取り囲んでいることにも意味があります。見た目だけの飾りではなく、基準となるGの位置と対応しているのです。

ヘ音記号やハ音記号も基準となる音を示している

特定の音を基準にして五線上の音を決める仕組みは、ト音記号だけのものではありません。ヘ音記号やハ音記号も同じ「音部記号」の仲間です。

ヘ音記号はF、ハ音記号はCを基準にする

ヘ音記号はFを基準とする音部記号です。日本音名ではFが「ヘ」、イタリア語式では「ファ」なのでヘ音記号と呼ばれます。

現在一般的なヘ音記号では、五線の下から第4線がF=ファです。記号の右側にある2つの点も、この第4線を上下から挟むように置かれています。

ハ音記号はC=ド=日本音名のハを基準にする音部記号です。ヤマハの楽譜解説でも、ト音記号がト(ソ)、ヘ音記号がヘ(ファ)、ハ音記号がハ(ド)の位置を示すものとして説明されています。

音部記号基準となる音日本音名
ト音記号G(ソ)
ヘ音記号F(ファ)
ハ音記号C(ド)

音域に合わせて音部記号を変えると加線を減らせる

では、なぜすべての楽器をト音記号で書かないのでしょうか。

理由の一つは、楽器や声によってよく使う音域が異なるためです。低い音をト音記号だけで表そうとすると、五線の下に加線を何本も付けなければならず、楽譜が読みにくくなります。

そこで、高い音域ではト音記号、低い音域ではヘ音記号、中間の音域では必要に応じてハ音記号というように、基準となる音の位置を変えて五線を効率よく使います。

ト音記号のあの形は、単なる装飾から生まれたものではありません。もとをたどればGの文字であり、そのGの位置を五線上に示すという役割が現在の形にも残っています。

「形はGが由来」「G=ソ=ト」「現在は第2線がG」という3点を結び付けて覚えると、ト音記号がなぜあの形をしているのかだけでなく、楽譜の中で何をしている記号なのかまで理解できます。

楽譜の仕組みをもう少し学んでみたい場合は、初心者向けの音楽理論学習アプリを比較した記事も参考にしてください。

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