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陸上ではよちよちと歩くペンギンですが、海へ入ると翼を力強く動かし、水中を飛ぶように泳ぎます。その姿を見ると、何メートルまで潜れるのか、息がどのくらい続くのか気になりますよね。
結論からいうと、ペンギンの中で最も優れた潜水記録を持つコウテイペンギンは、最大深度564メートル、最長潜水時間32.2分を記録しています。深く長く潜れるのは、泳ぎに特化した体と、酸素を蓄えて無駄なく使う仕組みが発達しているためです。
この記事では、ペンギンの潜水深度と時間の記録をはじめ、フリッパー、血液や筋肉の酸素、心拍数、血流、浮力など、潜水能力を支える体の仕組みを紹介します。
ペンギンの潜水能力はどれくらい?

ペンギンの潜水能力は種類によって大きく異なります。一般に体の大きな種類ほど、体内に多くの酸素を蓄えられ、体重当たりの酸素消費も抑えやすいため、長く深く潜る傾向があります。
特に優れた記録を持つのが、最も体の大きなコウテイペンギンと、2番目に大きなキングペンギンです。
| 種類 | 確認されている最大深度 | 確認されている最長時間 |
|---|---|---|
| コウテイペンギン | 564m | 32.2分 |
| キングペンギン | 424.5m | 10分 |
数値は野外調査で確認された最大記録です。個体、季節、餌のいる深さ、調査場所などによって潜水行動は変わります。
コウテイペンギンは最大564m・最長32.2分
コウテイペンギンは、英語名からエンペラーペンギンとも呼ばれる、現生のペンギンで最も体が大きい種類です。
現在、研究論文で引用されている最大記録は、深度564メートル、潜水時間32.2分です。鳥類の中でも特に深く長く潜れる種類として知られています。
564メートルは、東京スカイツリーの高さ634メートルに近い深さです。ただし、コウテイペンギンが毎回この深さまで潜っているわけではありません。
最大記録は普段の潜水とは異なる
最大深度や最長時間は、あくまで観測された例外的な記録です。
コウテイペンギン93羽から13万回を超える潜水データを記録した研究では、400メートルを超える潜水や12分を超える潜水は、全体の中ではごく一部でした。深さや時間の限界に近い潜水は、日常的に繰り返されるものではありません。
2011年に報告された27分36秒の潜水では、浮上した個体が約6分間激しく呼吸し、その後も約20分間休んでいます。非常に長い潜水は、コウテイペンギンにとっても大きな負担になると考えられます。
「32.2分潜れる」という記録を、「いつも30分以上潜っている」と受け取らないことが大切です。
種類や体の大きさで潜水能力は変わる
2025年に発表された研究では、キングペンギンが最大424.5メートル、最長10分の潜水を行ったことが報告されました。それまで知られていた343メートル、9.2分という記録を更新しています。
大型種が長く深く潜りやすい理由には、体の大きさが関係しています。体が大きいほど全体として多くの酸素を蓄えられる一方、体重当たりの酸素消費量は小型種ほど大きくなりません。そのため、大型のコウテイペンギンやキングペンギンが有利になります。
ただし、小型のペンギンも能力が低いわけではありません。それぞれの生息環境や餌のいる深さに合った潜水をしています。
ペンギンは南極だけに生息しているわけではなく、種類によって暮らす海域や気候も異なります。種類ごとの生息地については「ペンギンは南極以外にも住んでる?」の記事で紹介しています。
ペンギンはなぜ深く長く潜れるの?

ペンギンが深く長く潜れる理由は、肺活量が大きいからだけではありません。
主に次の仕組みが組み合わさっています。
- 翼と体が水中移動に特化している
- 呼吸器・血液・筋肉に酸素を蓄えられる
- 潜水中に心拍数を下げられる
- 必要な器官へ優先して血液を送れる
- 少ない酸素でも働ける血液を持つ
- 空気量と浮力を潜水に利用している
それぞれを順番に見ていきましょう。
翼が水中用のフリッパーへ変化している
ペンギンは鳥類ですが、現生種は空を飛べません。その代わり、翼は短く硬いフリッパーへ変化し、水中で推進力を生み出す構造になっています。
ペンギンはフリッパーを上下に動かし、飛ぶ鳥が空気から揚力を得るように、水から力を受けて前へ進みます。研究では、上下両方向のストロークで推進力を生み出していることが示されています。
遺伝子や骨格を調べた研究でも、ペンギンの水中生活への進化に伴い、前肢の骨が短く、硬く、密度の高い構造へ変化したことが報告されています。
陸上では動きにくそうに見える体も、水中では抵抗を抑えながら効率よく進むために役立っています。
ペンギンが空を飛べなくなった進化の経緯については、「ペンギンは鳥なのに飛べないのはなぜ?」の記事で詳しく紹介しています。
ペンギンが冷たい海で活動できる背景には、酸素を効率よく使う能力だけでなく、密集した羽毛や皮下脂肪による保温機能もあります。寒さに耐えられる仕組みは「ペンギンはなぜ凍えないの?」の記事で詳しく解説しています。
血液・筋肉・呼吸器に酸素を蓄える
ペンギンは人間と同じ肺呼吸の動物です。水中から酸素を取り込むことはできないため、潜る前に体内へ取り込んだ酸素を使います。
酸素を蓄える場所は、肺や気嚢などの呼吸器だけではありません。
- 呼吸器内の空気
- 血液中のヘモグロビン
- 筋肉中のミオグロビン
これらを酸素の貯蔵場所として利用します。
深く潜るコウテイペンギンでは、潜水前に取り込む空気量を増やすことで、体内の酸素量を体重1キログラム当たり約68ミリリットルまで増やせると推定されています。
ただし、どの場所の酸素をどの程度使うかは、潜水の深さや時間、活動量によって変わります。
心拍数を下げて酸素の消費を抑える
潜水中のコウテイペンギンは、心拍数を下げることで酸素の消費を抑えます。この反応は「潜水性徐脈」と呼ばれます。
研究では、コウテイペンギンの安静時の心拍数が1分間に平均73回だったのに対し、潜水中は平均57回まで低下しました。長時間の潜水ではさらに低くなり、18分間の潜水の終盤5分間に、心拍数が1分間に6回まで下がった例も確認されています。
心臓を完全に止めているわけではありません。潜水の状況に合わせて心拍数を変え、酸素を節約しています。
浮上後には心拍数を大きく上げ、呼吸によって酸素を補給し、潜水中に生じた代謝上の負担から回復します。
必要な器官へ酸素を優先して送る
潜水中は、全身へ同じ量の血液を送り続けるわけではありません。
コウテイペンギンは末端や一部の筋肉へ流れる血液を抑え、脳や心臓など、生命維持に欠かせない器官へ酸素を優先して送ります。この血流調整と心拍数の低下が、血液中の酸素を長く保つうえで重要です。
血液から切り離された筋肉は、筋肉内のミオグロビンに蓄えた酸素を利用します。
つまり、ペンギンは酸素を一様に消費するのではなく、潜水中に必要な場所と量を調整しているのです。
少ない酸素でも働ける血液を持つ
コウテイペンギンのヘモグロビンは、酸素が少ない状態でも酸素と結びつきやすい性質を持っています。
研究では、コウテイペンギンのヘモグロビンは一般的な鳥類より酸素への親和性が高く、潜水中に呼吸器から血液へ酸素を取り込みやすいことが示されています。動脈血の酸素飽和度は潜水の大部分で高く保たれ、大きく低下するのは浮上の終盤に近づいてからでした。
限られた酸素を最後まで利用できる血液の性質も、長時間潜水を支える要素です。
深さに合わせて空気量と浮力を調整する
空気は酸素の貯蔵場所である一方、水中では体を浮かせる浮力も生みます。
多くの空気を取り込めば酸素量は増えますが、潜り始めは浮力が強くなり、沈むために多くの力が必要です。深く潜るにつれて空気は水圧で圧縮され、浮力は小さくなります。
ペンギンの動きを記録した研究では、深い潜水をするときほど多くの空気を取り込む傾向が確認されました。コウテイペンギンはこれから潜る深さに合わせて、潜水前の空気量を変えている可能性があります。
浮上時には、圧縮されていた空気が膨らんで浮力が増します。ペンギンは浮上の後半でフリッパーを動かす回数を減らし、浮力を利用して滑るように水面へ向かうことがあります。
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ペンギンは何のために深く潜るの?

ペンギンが潜る主な目的は、海中にいる餌を捕まえることです。
潜る深さは身体能力だけで決まるのではなく、餌の種類や分布、水深、季節、海氷、明るさなどによっても変わります。
魚やイカなどの餌を探している
ペンギンは種類や生息地に応じて、魚、イカ、オキアミなどを食べます。
コウテイペンギンが500メートルを超える深さまで潜れるからといって、常に深海で餌を探しているわけではありません。餌が浅い場所にいれば、深く潜る必要はないためです。
2007年に報告された長期調査では、コウテイペンギンの非常に深い潜水と非常に長い潜水が現れる季節には違いがありました。潜水行動は、体の限界だけでなく、周辺の環境や餌の状態にも左右されます。
暗い海では下から獲物へ近づくことがある
深度100メートルを超える海中では、太陽の光が弱くなります。それでもキングペンギンは、暗い場所で魚を捕まえています。
東京大学などの研究グループは、LEDライト付きの小型カメラをキングペンギンに装着し、深い海で魚を捕らえる様子を撮影しました。
撮影された個体は、魚から1~3メートルほどの位置で狙いを定め、上昇しながら下側から近づくことが多く、記録された136回の捕食行動のうち118回で捕獲に成功しました。
魚から見ると、ペンギンの後ろには暗い深海が広がるため、接近に気づきにくい可能性があります。一方、ペンギンからは明るい海面を背景に魚の姿を捉えやすくなると考えられています。ただし、この効果については研究者が示した可能性であり、すべての種類や潜水に当てはまるとは限りません。
ペンギンの白いお腹と黒い背中も、水中で獲物へ近づいたり、天敵から見つかりにくくなったりするために役立ちます。詳しい仕組みは「ペンギンが白と黒の理由」の記事で紹介しています。
ペンギンは水圧にどう耐えている?
海は深くなるほど水圧が高くなります。
ペンギンは水圧を無効にしているわけではありません。体内の空気が圧縮されることを前提に、呼吸器、循環器、骨格、体内の酸素貯蔵を組み合わせて潜っています。
ペンギンは水中で呼吸しているわけではない
ペンギンは鳥類なので肺呼吸です。魚のようなえらはなく、水中で新たな酸素を取り込むことはできません。
鳥類の呼吸器には肺に加えて気嚢があります。気嚢は薄い袋状の器官で、空気を移動させ、肺でのガス交換を助けます。
潜水中は呼吸を止め、潜る前に取り込んだ酸素を呼吸器、血液、筋肉から利用します。
呼吸器内の空気は潜るほど圧縮される
深く潜るにつれて、肺や気嚢などに含まれる空気は圧縮されます。
ペンギンの呼吸器を調べた研究では、気嚢の容量だけでは、最も深い潜水で呼吸器が圧力からどのように守られているかを完全には説明できないとされています。深い潜水では、肺や気道の容積変化など、複数の仕組みが関係していると考えられています。
そのため、「気嚢がクッションになるから水圧に耐えられる」と単純に説明するのも正確ではありません。
骨だけで水圧に耐えているわけではない
ペンギンの骨は、空を飛ぶ多くの鳥と比べて密度が高く、水中生活へ適応した構造になっています。前肢の骨が短く硬くなったことも、フリッパーによる推進に役立っています。
密度の高い骨は体を沈めやすくする要素にはなりますが、「骨が頑丈だから深海の水圧に耐えられる」とだけ説明するのは不十分です。
水圧への対応には、次の要素が関係します。
- 呼吸器内の空気が圧縮されること
- 肺や気嚢の構造
- 血液と筋肉に酸素を分散して蓄えること
- 潜水深度に応じて空気量を変えること
- 心拍数と血流を調整すること
- 体内に大きな空洞を持ちすぎない構造
ペンギンの潜水能力は、ひとつの器官ではなく、体全体の適応によって成り立っています。
ペンギンの潜水記録はどうやって調べる?

人間が野生のペンギンと一緒に数百メートル潜り、行動を観察することはできません。
そのため、研究ではバイオロギングと呼ばれる方法が使われます。
小型の記録装置を背中に装着する
バイオロギングでは、ペンギンの背中などに小型の装置を一時的に取り付けます。
装置によって、次の情報を記録できます。
- 潜水深度
- 潜水時間
- 遊泳速度
- 体の向き
- 加速度
- フリッパーを動かした回数
- 心拍数
- 血液や気嚢内の酸素状態
- 海中の映像
2011年に報告された27分36秒の潜水も、深度・速度・加速度を記録する装置によって確認されました。
装置を回収できる調査では、より詳しいデータを取得できます。一方、記録できる期間や装置の大きさには限界があります。
記録値は種類・季節・場所によって変わる
潜水記録を比べるときは、最大値だけで判断しないことが大切です。
数値は次の条件で変わります。
- ペンギンの種類
- 成鳥か幼鳥か
- 体の大きさ
- 繁殖期か非繁殖期か
- 夏か冬か
- 餌の種類といる深さ
- 海底までの深さ
- 海氷の状態
- 装置を付けた期間
- 記録された個体数
キングペンギンの最大記録が2025年に更新されたのも、これまで調査が少なかった秋から冬にかけての長期的な採餌行動を記録できたためです。
今後、別の地域や季節の個体を調べれば、新しい記録が見つかる可能性があります。
ペンギンの潜水に関するよくある質問
ペンギンは水中で息ができますか?
できません。
ペンギンは肺呼吸をする鳥類なので、水中では息を止めています。潜る前に取り込んだ酸素を、呼吸器、血液、筋肉に蓄えて利用します。
ペンギンは最大で何メートル潜れますか?
現在、ペンギンで確認されている最大記録は、コウテイペンギンの564メートルです。
ただし、すべてのペンギンがこの深さまで潜れるわけではなく、種類や個体によって大きく異なります。
コウテイペンギンは最長何分潜れますか?
報告されている最長記録は32.2分です。
これは例外的な記録であり、普段から30分以上潜っているわけではありません。
ペンギンは眠りながら潜れますか?
採餌を目的とする潜水では、泳いだり獲物を探したりしているため、眠っているわけではありません。
水面や陸上での睡眠行動とは分けて考える必要があります。
なぜ大型のペンギンほど長く潜れるのですか?
体全体に蓄えられる酸素量が多く、体重当たりの酸素消費量を抑えやすいためです。
そのため、最大種のコウテイペンギンと、2番目に大きなキングペンギンが特に優れた潜水記録を持っています。
ペンギンは潜る前に深さを分かっているのですか?
正確な仕組みは分かっていませんが、研究では深い潜水ほど多くの空気を取り込む傾向が確認されています。
餌場や海底までの深さなど、過去の経験や周囲の状況をもとに、潜水前の空気量を変えている可能性があります。
ペンギンはどうして浮上時に羽ばたかなくても上がれるのですか?
体内や羽毛に含まれる空気が浮力を生むためです。
深い場所では圧縮されていた空気が、浮上するにつれて膨らみます。浮力が強くなるため、浮上の後半ではフリッパーの動きを減らし、滑るように上がることがあります。
まとめ

- ペンギンは肺呼吸をする鳥類で、水中では息を止めている
- 最も優れた記録を持つのはコウテイペンギン
- コウテイペンギンの最大潜水深度は564メートル
- 最長潜水時間として32.2分が報告されている
- 564メートルや32.2分は例外的な最大記録
- キングペンギンは2025年の研究で424.5メートル、10分を記録した
- 大型種ほど酸素を多く蓄え、長く深く潜りやすい
- 翼は水中を進むためのフリッパーへ変化している
- 酸素は呼吸器だけでなく、血液と筋肉にも蓄えられる
- 潜水中は心拍数を下げ、必要な器官へ酸素を優先して送る
- 深さに応じて取り込む空気量を変えている可能性がある
- 浮上時には空気の浮力を利用し、少ない力で水面へ戻る
- 深海での潜水は、魚やイカなどの餌を探すために行われる
- 潜水記録は、小型のデータロガーやカメラを使って測定される
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