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スマートフォンを決済端末やカード、NFCタグに近づけるだけで、画面を操作しなくても情報を読み取れたり、支払いができたりすることがあります。
この「かざすだけ」の通信に使われている代表的な技術がNFC(Near Field Communication)です。NFCは13.56MHzの周波数を使う近距離無線通信で、スマホと相手を数cm程度まで近づけて情報をやり取りします。
NFCの大きな特徴は、接続先を一覧から探してペアリングするのではなく、相手へ近づける動作そのものを通信開始のきっかけにできることです。
しかも、NFCタグのように電池を持っていないものでもスマホへ情報を返せます。なぜそんなことができるのか、通信が始まってから情報が返ってくるまでの仕組みを順番に見ていきます。
NFCとは?スマホをかざすだけで通信できる近距離無線通信
NFCはNear Field Communicationの略
NFCは「Near Field Communication」の略で、日本語では近距離無線通信などと呼ばれます。
ソニーのNFC解説では、NFCを13.56MHzの周波数を利用する通信距離10cm程度の近距離無線通信技術と説明しています。
ただし、「10cm離しても普通に読める」という意味ではありません。スマートフォンで使う場合はもっと近づけることが多く、Android Developersでは、通常は接続開始に4cm以下の距離が必要と説明されています。
実際にはアンテナの位置や大きさ、スマホとタグの向きなどでも読み取りやすさが変わります。そのため、NFCは「数cmほどの非常に近い範囲で使う通信」と考えると分かりやすいでしょう。
通信距離が短く少量のデータ交換に向いている
NFCは、遠く離れた機器へ大量のデータを送り続けるための技術ではありません。
NFC ForumはNFCの特徴として、通信開始が速いこと、接続時間が短いこと、小さなデータのやり取りに向いていることなどを挙げています。
たとえばNFCタグからWebサイトのURLを読み取る場合、NFCでインターネット上のWebページそのものを受信しているわけではありません。NFCがスマホへ渡すのはURLなどの情報で、そのURLへアクセスするときにはモバイル通信やWi-Fiが使われます。
「近づけたことをきっかけに、小さな情報をすばやく渡す」のがNFCの得意分野です。
NFCはなぜ「かざすだけ」で通信できるのか
NFCが不思議に感じられるのは、ケーブルをつながなくても、スマホを近づけただけでカードや小さなタグが反応する点ではないでしょうか。
ここでは、スマホがNFCタグを読み取る場合を例に、起きていることを順番に説明します。
スマホのアンテナが13.56MHzの電磁界を作る
NFC対応スマートフォンには、NFC通信に使うアンテナと制御回路が組み込まれています。
スマホがNFCの読み取り側として動くと、アンテナの周囲に13.56MHzの高周波の電磁界を作ります。
NFCでは、離れた場所まで強い電波を飛ばすというより、スマホとタグにあるアンテナ同士が非常に近い場所で磁気的に結び付く「誘導結合」という仕組みが重要です。
STMicroelectronicsのNFC解説でも、NFCは13.56MHzで動作し、リーダーが磁界を介してタグへ電力を供給する仕組みが説明されています。
電池のないNFCタグも電磁界から電力を受け取れる
シール状のNFCタグやカードには、電池が入っていないものが数多くあります。それでもスマホへかざすと反応します。
これは、読み取り側が作った磁界から、タグ側が動作に必要なエネルギーを受け取れるためです。
イメージとしては、スマホ側のアンテナとタグ側のループ状アンテナが、わずかな空間を挟んだ変圧器のように働きます。タグをスマホへ十分近づけると、タグのアンテナに電気的なエネルギーが生まれ、内部のICチップを動作させられます。
スマホが通信のための磁界を作り、その磁界がタグを動かす電力にもなるため、電池のないNFCタグでも読み取れるのです。
スマホが命令を送りタグが情報を返す
タグが動き始めると、次はスマホとタグの間で情報のやり取りが行われます。
- スマホ側がNFC用の電磁界を作る
- 近くにあるタグが電力を受け取って動作する
- スマホがタグへ読み取りなどの命令を送る
- タグが保存している情報をスマホへ返す
- スマホが受け取ったデータをアプリやOSで処理する
電池を持たない受動型のタグでは、自分から強い電波を発射する代わりに、アンテナの電気的な負荷を変化させる「負荷変調」と呼ばれる方法などを使って応答します。
読み取り側は、その小さな変化を検出してタグからのデータとして読み取ります。
目には見えませんが、スマホをタグへ近づけた瞬間には「給電する」「命令を送る」「タグが応答する」という処理が短時間で行われています。
数cmまで近づけるから通信をすばやく始められる
NFCの通信距離が短いのは不便に思えるかもしれませんが、「使いたい相手へスマホを近づける」という分かりやすい操作につながっています。
たとえばBluetoothイヤホンでは、周囲の機器を探し、目的の機器を選んで接続するといった操作を行うことがあります。NFCでは、対象物へ物理的に近づけることで「この相手と通信したい」という操作を直感的に行えます。
ただし、通信距離が短いことだけで安全性が完全に保証されるわけではありません。決済や電子キーなどでは、NFCの通信方式に加えて、認証や暗号化、端末内のセキュリティ機構なども組み合わせて利用されています。
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スマホのNFCでは何ができる?
NFCは電子決済だけの技術ではありません。スマートフォンは、状況によって「読み取り機」としても「カードのようなもの」としても使えます。
NFCタグやICカードの情報を読み取る
分かりやすい用途が、スマートフォンをNFCタグへ近づけて情報を読み取る使い方です。
NFCタグには、WebサイトのURLや短いテキスト、機器設定に必要な情報などを保存できます。対応するタグでは、スマホから情報を書き込むことも可能です。
URLをスマホへ伝えるという点ではQRコードと似た場面でも使えますが、仕組みは大きく異なります。QRコードはカメラで白黒の模様を読み取るのに対し、NFCは13.56MHzの無線通信を使います。
QRコード側の仕組みも知りたい場合は、QRコードの白黒模様が情報を伝える仕組みで詳しく解説しています。
スマホ自身をカードとして使う
NFC対応スマートフォンは、外部の読み取り機から見たときに、非接触ICカードのように振る舞うこともできます。
Androidでは「カードエミュレーション」と呼ばれる仕組みが用意されており、Android Developersでも、NFCの主な動作の一つとしてリーダー/ライターモードとカードエミュレーションモードが説明されています。
スマホを店舗の決済端末や改札、対応する読み取り機へかざして使えるのは、このようにスマホ側がカードに相当する役割を持てるためです。
決済・乗車券・鍵・本人確認などに利用される
NFCを利用する代表的な分野には、非接触決済、交通機関の乗車券、施設への入退室、デジタルキーなどがあります。
iPhoneでもNFCはさまざまな機能に利用されています。Appleは現在、対応アプリによる店舗決済、交通、社員証、学生証、住宅やホテルの鍵、イベントチケットなど、複数の非接触用途をNFC関連プラットフォームで扱っています。
ただし、「NFCに対応している」というだけで、すべての決済・乗車券・鍵が利用できるわけではありません。端末、OS、アプリ、サービス提供者のすべてが対応している必要があります。
BluetoothやWi-Fi接続のきっかけとして使われる場合もある
NFCだけで大量のデータを送り続けるのではなく、最初の接続情報だけをNFCで渡し、その後の通信をBluetoothやWi-Fiへ引き継ぐ使い方もあります。
NFC ForumのConnection Handover仕様では、NFCを使って別の無線通信方式による接続を確立する仕組みが定められています。
NFCは「相手を簡単に指定する」、BluetoothやWi-Fiは「その後の通信を担当する」という役割分担ができるわけです。
NFC・FeliCa・おサイフケータイは何が違う?
日本ではNFCを調べると「FeliCa」や「おサイフケータイ」という言葉もよく出てきます。似た場面で使われますが、すべて同じ意味ではありません。
FeliCaはNFC-Fと関係する非接触ICカード技術
FeliCaはソニーが開発した非接触ICカード技術です。
NFCにはNFC-A、NFC-B、NFC-Fなど複数の通信技術があり、FeliCaの無線通信部分はNFC-Fと関係しています。
ソニーの「NFCとFeliCaの関係」では、NFC-FとFeliCaは同じ無線通信技術を使い、FeliCaはNFC-Fというオープン規格の上にカードOSを加えたものと説明されています。
そのため、NFC全体とFeliCaを完全に同じ言葉として扱うのではなく、「NFCという大きな枠組みの中にNFC-Fがあり、FeliCaがそれと深く関係している」と考えると整理しやすくなります。
おサイフケータイはNFCそのものではなくサービスの仕組み
おサイフケータイも、NFCという通信方式そのものの名前ではありません。
NTTドコモは、おサイフケータイをNFCの非接触ICカード機能を利用し、電子マネー、ポイントカード、乗車券などをスマートフォンで利用できるサービスの総称として説明しています。
整理すると、NFCは「近距離通信の技術」、FeliCaは「非接触ICカード技術」、おサイフケータイは「それらを利用してスマホを財布のように使うためのサービス」と役割が異なります。
NFC対応スマホでも使えるサービスは端末ごとに異なる
スマートフォンの仕様表に「NFC対応」と書かれていても、それだけを見て「おサイフケータイも使える」と判断するのは避けたほうが安全です。
NFCとして通信できることと、日本向けのFeliCa・おサイフケータイ機能に対応していることは確認項目が異なります。
特定の電子マネーや交通系サービスを使うことが目的なら、スマートフォンメーカーの仕様表だけでなく、利用したいサービス側の対応機種も確認してください。
NFCとBluetooth・Wi-Fiは何が違う?
NFC、Bluetooth、Wi-Fiはいずれもケーブルを使わずに通信できますが、得意な使い方が違います。
| 通信方式 | 得意なこと | 主な使い方 |
|---|---|---|
| NFC | 数cm程度で素早く通信を始める | 決済、タグ読み取り、カード機能、接続情報の受け渡し |
| Bluetooth | 近くの機器と継続して通信する | イヤホン、キーボード、マウス、ウェアラブル機器 |
| Wi-Fi | 比較的大きなデータを高速に通信する | ネットワーク接続、動画、Web、ファイル通信 |
NFCは「近づけてすぐ通信」が得意
NFCでは通信距離の短さを利用して、「このタグを読む」「この端末へかざす」といった操作を分かりやすくできます。
一方で、動画や写真のような大量のデータを長時間送り続ける用途には向いていません。
Bluetoothは継続的な周辺機器接続に向いている
Bluetoothは、ワイヤレスイヤホンやキーボード、マウスなど、ある程度離れた機器と接続状態を維持しながら使う場面を得意とします。
NFCのように数cmまで近づけ続ける必要はありません。
Bluetoothで機器が見つかり、ペアリングされ、通信が始まる仕組みについては、Bluetoothってどうやって繋がるの?身近なワイヤレス技術の仕組みで詳しく紹介しています。
Wi-Fiは大量のデータ通信やネットワーク接続に向いている
Wi-FiはNFCよりも広い範囲で利用され、高速なネットワーク通信に向いています。家庭のWi-Fiルーターを通してインターネットへ接続するといった使い方が身近です。
NFCタグを読んでWebサイトが開いた場合も、WebページのデータそのものはNFCではなく、その後にWi-Fiやモバイル回線などを通じて取得します。
Wi-Fi側の通信がどのように成立しているのかは、Wi-Fiはどう繋がる?仕組みとパスワード、必要なものをスッキリ解説も参考になります。
自分のスマホがNFC対応か確認する方法
NFCを使いたい場合は、まずスマートフォン自体が必要なNFC機能に対応しているか確認します。
特に決済や交通系サービスが目的の場合は、「NFCの有無」だけで判断せず、利用したいサービスまで確認することが大切です。
Androidは設定画面とメーカー仕様表を確認する
Androidスマートフォンでは、メーカーや機種によって設定画面の名称や位置が異なります。
まずは設定アプリで「NFC」と検索してみると確認しやすいでしょう。あわせて、メーカー公式の製品仕様や取扱説明書でNFCへの対応を確認すると確実です。
たとえばGoogle Pixelでは、Google Pixelヘルプで「設定」→「接続済みのデバイス」→「接続の設定」→「NFC」から「NFCを使用」をオンにする手順が案内されています。
Googleは、NFC設定自体が表示されないPixelではNFCに対応していないと案内しています。ただし、この設定手順を他社のAndroid端末へそのまま当てはめることはできないため、機種ごとの説明書を確認してください。
iPhoneは利用したいNFC機能ごとに対応状況を確認する
iPhoneでは、「NFC対応かどうか」だけでなく、何に使いたいのかによって確認する項目が変わります。
たとえばNFCタグの読み取りではCore NFCが利用され、AppleはiPhone XS以降について対応するNFCタグのバックグラウンド読み取りを案内しています。バックグラウンド読み取りでは、対応するタグへ近づけると、専用の読み取り操作を開始しなくてもタグを検出できる場合があります。
一方、Apple Payや交通系サービス、デジタルキーなどは、それぞれ端末、OS、地域、サービス側の対応条件があります。目的のサービスについてAppleやサービス提供者の対応情報を確認するのが確実です。
NFC対応とFeliCa・おサイフケータイ対応は分けて確認する
Androidスマートフォンを選ぶときに特に注意したいのが、この違いです。
仕様欄に「NFC」と書かれていても、利用したいFeliCa系サービスやおサイフケータイに対応しているとは限りません。
- NFCタグを読み取りたい → NFC機能を確認
- おサイフケータイを使いたい → おサイフケータイ対応を確認
- 特定の電子マネーや乗車券を使いたい → そのサービスの対応機種を確認
この3つを分けて調べると、「NFC対応スマホを買ったのに目的のサービスが使えなかった」という行き違いを避けやすくなります。
NFC非対応端末は設定だけではNFC対応にならない
NFCにはアンテナやNFCコントローラなどのハードウェアが必要です。
そのため、NFCを搭載していないスマートフォンへアプリを入れたり、設定を変更したりするだけで、本体のNFC機能を追加することはできません。
外付けの専用機器を利用できる特殊なケースはありますが、それはスマホ本体がNFC対応になったわけではありません。NFCを日常的に使いたい場合は、端末購入時に対応状況を確認しておくのが基本です。
NFCが反応しないときに確認したいこと
NFC対応スマートフォンなのにタグや読み取り機へかざしても反応しない場合、すぐに故障と判断する必要はありません。
NFCは通信範囲が狭いため、位置や設定、周囲にあるカードなどの影響で読み取りに失敗することがあります。
| 確認すること | 主な理由 |
|---|---|
| かざす位置 | NFCアンテナ同士が離れていると通信できない |
| ケース内のカード類 | 別のNFCチップへ反応して正常に読み取れない場合がある |
| NFC設定 | AndroidではNFCがオフになっている場合がある |
| 端末・タグ・サービスの対応 | NFC対応でも目的の規格やサービスが使えるとは限らない |
スマホのNFCアンテナ位置を読み取り部分へ近づける
NFCで最初に確認したいのが、スマートフォンをかざしている位置です。
NFCアンテナの位置は機種ごとに異なります。スマホの中央付近とは限らず、本体上部や背面の一部などに配置されている場合があります。
反応しない場合は、端末を大きく離したまま何度も振るのではなく、読み取り部分の近くで背面の位置を少しずつ変えてみてください。正確な位置はメーカーの取扱説明書や製品サポートで確認できます。
厚いケースやカード類をいったん外して確認する
スマートフォンケース自体や、ケースに収納しているカードが読み取りへ影響する場合もあります。
特にクレジットカードや交通系ICカードなど、別のNFCチップを持つものをスマホのすぐ近くに入れている場合は、一度外して試してみましょう。
GoogleもPixelの非接触決済トラブルについて、支払いカードなどNFCチップを搭載したものがケース内にある場合は、ケースを外して改善するか確認するよう案内しています。
AndroidではNFCがオンになっているか確認する
Android端末では、NFC機能をオン・オフできる機種があります。
以前は使えていたのに突然反応しなくなった場合は、設定変更や省電力関連の操作などのあとにNFCが利用できる状態になっているか確認してください。
設定項目はメーカーやOSバージョンで異なるため、設定アプリ内で「NFC」と検索するか、メーカー公式の取扱説明書を確認する方法が確実です。
端末・タグ・アプリ・サービスの対応条件を確認する
スマホにNFCが搭載されていても、すべてのNFC関連機能を無条件で利用できるわけではありません。
タグやICカードの種類、アプリの対応、OSのバージョン、決済サービスの利用条件などによって、読み取りやカード機能を利用できないことがあります。
位置やケース、NFC設定を確認しても反応しない場合は、最後に「スマホがNFC対応か」だけを見るのではなく、利用しようとしているタグ・カード・アプリ・サービスまで含めて対応しているかを確認してください。
NFCは、数cmという短い距離の中で、スマホが電磁界を作り、相手へ電力や命令を送り、情報を受け取ることで「かざすだけ」の通信を実現しています。決済だけではなく、タグ読み取りやカード機能、別の無線通信への接続補助など、身近なところで幅広く使われている技術です。
「NFC対応」という表示だけでは利用できる機能まで決まらないため、実際に使うときはFeliCaやおサイフケータイ、個別サービスとの対応関係まで分けて確認すると迷いにくくなります。
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