電車の線路に石が敷かれているのはなぜ?バラストの役割をわかりやすく解説

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駅のホームや踏切から線路を見ると、レールの下やまくらぎの周囲に大量の石が敷かれています。地面を埋めるためだけなら、もっと細かい砂利やコンクリートでもよさそうに見えます。

あの石は「バラスト」と呼ばれる鉄道線路の重要な材料です。列車の重さを広い範囲へ分散し、走行時の振動を小さくしながら、レールとまくらぎを安定して支える役割があります。

線路の石は、列車の重さを受け止める土台の一部として働いているため敷かれています。

ただし、すべての線路に石が必要なわけではありません。コンクリートを使う「スラブ軌道」のように、バラストをほとんど使わない方式もあります。ここでは、なぜ線路に石を敷くのかから、石がない線路との違いまで順番に見ていきます。

電車の線路に石が敷かれているのはなぜ?

線路の石には、一つだけではなく複数の役割があります。特に重要なのは、次のような働きです。

  • 列車の重さを広い範囲へ分散する
  • 走行時の振動や衝撃を和らげる
  • まくらぎと線路を安定させる
  • 水を抜けやすくする
  • 線路の高さや位置を調整しやすくする

国土交通省の鉄道に関するQ&Aでも、バラストを敷く主な理由として、列車重量を分散して路盤へ均等に荷重をかけることと、列車走行時の振動を少なくすることが説明されています。

線路の石は「バラスト」と呼ばれる

線路に敷かれている石の正式な呼び方は道床バラスト、一般には単に「バラスト」と呼ばれます。「道床」は、まくらぎの下や周囲で線路を支える部分です。

見た目は普通の砂利に似ていますが、適当な石を集めて敷いているわけではありません。鉄道総研では、バラストについて石材の材質や形、粒の混ざり具合などが基準に適合しているかを確認する品質管理を行っています。

鉄道総研が解析に使用している一般的な道床バラスト層の例では、粒径約20~60mmの粗い砕石で構成されています。実際に使われる粒度や仕様は鉄道事業者や軌道条件などによって異なりますが、細かな砂ではなく比較的大きな砕石を使うことが特徴です。

列車の重さを広い範囲へ分散する

列車の重さは、まず車輪からレールへ伝わり、さらにまくらぎ、バラスト、その下の路盤へと伝わっていきます。

もしレールやまくらぎの力が狭い範囲へ集中すると、下の地盤へ大きな負担がかかります。バラストを厚く敷くことで力を周囲へ分散し、線路を安定して支えやすくしています。

国土交通省がバラストを椅子の「クッション」に例えているのは、この働きをイメージすると分かりやすいでしょう。ただ柔らかくするという意味ではなく、列車から伝わる大きな力を受け止め、下へ分散させる層として機能しています。

振動や衝撃を和らげる

列車が走ると、車輪とレールの接触によって線路には繰り返し力が加わります。レールを硬い地盤へ直接固定するだけでは、その振動や衝撃が伝わりやすくなります。

バラスト軌道では、多数の砕石が重なった層がまくらぎを支えています。石同士が接触する構造によって、列車から伝わる振動を小さくする働きがあります。

この性質は、後で紹介するスラブ軌道との違いを理解するうえでも重要です。バラストは重さを支えるだけでなく、線路と地盤の間にある緩衝層としても働いています。

まくらぎと線路を動きにくくする

バラストは、まくらぎの真下だけでなく、その周囲にも敷かれています。これは、まくらぎが上下方向の荷重を受けるだけでなく、横方向へ動こうとする力にも対応する必要があるためです。

鉄道では、まくらぎ周囲のバラストが軌道の横方向の動きに抵抗する力を「道床横抵抗力」として扱います。バラストとまくらぎの接触状態は、線路を所定の位置へ保つうえで重要です。

単にレールの下へ石を敷いているのではなく、まくらぎを砕石で囲むように支えることで線路全体を安定させています。

なぜ普通の砂利ではなく角ばった石を使う?

線路を近くから見ると、バラストには川原にある丸い小石とは違い、ごつごつとした角があります。これは岩石を砕いて作った「砕石」が使われているためです。

バラスト軌道では石同士の接触状態が線路の支持に関係するため、石の形や粒の大きさ、材質は重要です。

角ばった砕石は互いにかみ合って動きにくい

丸みの強い石は、力を受けたときに転がったり位置が変わったりしやすくなります。一方、バラストに使われる砕石は複雑で角ばった形をしています。

こうした粒子が重なり合うことで、石同士の摩擦やかみ合いが生まれます。鉄道総研でも、バラスト軌道は列車荷重の繰り返しによって砕石のかみ合いが徐々に崩れ、軌道変位につながることが説明されています。

そのため、「石なら何でも同じ」というわけではありません。線路を支える材料として使う以上、十分な強さがあり、軌道を安定して支えられる砕石であることが求められます。

大きさ・形・材質にも基準がある

バラストの性能は、石が硬いかどうかだけでは決まりません。粒の大きさや形、異なる大きさの石がどのような割合で混ざっているかも関係します。

鉄道総研のバラスト品質管理に関する資料では、道床バラストについて材質・形・粒度などを確認する石質試験が行われていることが分かります。

見た目は無造作に敷かれているようでも、線路の下では一つの「鉄道材料」として使われているのです。

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バラストには線路を保ちやすくする役割もある

バラスト軌道には、列車を支えること以外にもメリットがあります。特に、雨水への対応と、線路を後から調整できる点は重要です。

石のすき間によって水が抜けやすい

大きな砕石を積み重ねると、石と石の間にはすき間ができます。この空間があるため、水が道床の中を通りやすくなります。

この排水性が重要であることは、バラストが劣化したときの変化を見ると分かります。長く使用して砕石が細かくなったり、細かな土砂が増えたりすると、粒の間のすき間が埋まり、透水性が低下します。

鉄道総研では、細粒化したバラストは排水性が低下し、水分が多くなると強度が低下して軌道沈下が増えやすくなることを確認しています。つまり、バラストのすき間は単なる空間ではなく、道床の状態を保つうえでも意味があります。

バラストをつき固めて線路の高さやゆがみを直せる

列車が何度も通過すると、バラストの位置が少しずつ変わり、線路に高さのずれやゆがみが生じることがあります。

バラスト軌道では、こうした変化に対して、まくらぎを適切な位置へ持ち上げ、その下の砕石を再びつき固めることで線路を整えることができます。

この作業に使われる代表的な保守用車両がマルチプルタイタンパーです。JR東海は、マルチプルタイタンパーについて、まくらぎ直下の砕石をつき固めて充填し、レールのゆがみを直す保守用車と説明しています。

バラストは固定されたコンクリートとは違い、必要に応じて石の位置や締まり具合を調整できます。この「後から線路を整えられる」という性質も、長く利用されてきた理由の一つです。

すべての線路に石が敷かれているわけではない

鉄道に乗っていると、線路の下に石がほとんど見えず、コンクリートの上へ直接レールが設置されているような場所があります。

これは石を敷き忘れているわけではなく、バラスト軌道とは異なる構造を採用しているためです。

コンクリートを使う「スラブ軌道」もある

代表的なのがスラブ軌道です。コンクリート製の軌道スラブなどでレールを安定して支持する方式で、大量のバラストを道床として使う従来のバラスト軌道とは構造が異なります。

比較項目バラスト軌道スラブ軌道
主な支持構造砕石とまくらぎコンクリート製の軌道スラブなど
軌道の調整砕石をつき固めて整正できる軌道変位が生じにくく保守を省力化しやすい
特徴荷重分散や振動低減などにバラストが働くバラストのつき固めなどが不要

鉄道・運輸機構(JRTT)では、新幹線の基本的な軌道構造としてスラブ軌道を紹介しており、高架橋・橋りょう・トンネル・土路盤などで採用しています。

一方、在来線でもバラストを使わない「弾性まくらぎ直結軌道」などがあります。したがって、線路の下に石が見えないからといって特殊な異常状態というわけではありません。

新幹線でも石がある線路とない線路がある

「新幹線の線路には石がない」と思われることがありますが、すべての新幹線がスラブ軌道というわけではありません。

1964年に開業した東海道新幹線では、従来から使われていたバラスト軌道が採用されており、現在も砕石のつき固めなどの保守が行われています。

その後に建設された新幹線では、保守の省力化などを目的としてスラブ軌道が基本的な構造になりました。ただし、路線内でも条件によって軌道構造は異なるため、「在来線は石あり、新幹線は石なし」と単純に分けることはできません。

新幹線が高速で走るための線路以外の工夫については、新幹線の速さの秘密と安全に高速走行できる仕組みでも詳しく紹介しています。

線路のバラストは定期的に手入れされている

バラストは一度敷けば永久に使える材料ではありません。何年も列車の重さを受け続け、線路の保守作業も繰り返されるため、少しずつ状態が変化します。

列車が走り続けるとバラストは砕けて細かくなる

鉄道総研によると、バラスト軌道では長期にわたる列車走行やつき固め作業などによって、砕石が破砕・細粒化して劣化します。

細かな粒が増えると、もともとあった石同士のすき間が埋まり、排水性が低下します。さらに条件が悪化すると、まくらぎの下で泥状の細粒分が動く「噴泥」が起こり、軌道の沈下が進みやすくなることがあります。

そのため、古くなったバラストを見た目だけで「まだ石だから使える」と判断することはできません。鉄道では、沈下の状態や細粒分の割合などを調べながら、道床の健全性を管理しています。

つき固め・補充・交換で線路の状態を維持する

線路にずれが生じた場合は、バラストをつき固めて軌道を整正します。石が不足した場所では補充が必要になることもあり、劣化が進んだ場合には新しいバラストへの交換が必要です。

鉄道総研のバラスト劣化に関する解説では、破砕・細粒化が進むと軌道沈下が増え、状態によっては新品のバラストへの交換が必要になることが示されています。

普段、電車の窓から何気なく見えている石は、線路の形を保ち、列車の重さや振動を受け止めながら働き続けています。しかも、傷んだら整えたり交換したりできるため、日々の保線作業とも深く結びついています。

線路に石が敷かれている最大の理由は、列車の荷重を分散し、振動を和らげながら、線路を安定して支えるためです。 石がない線路では、スラブ軌道など別の構造が同じ「列車を安全に支える」という役割を担っています。

線路の下だけでなく、電車の上にも走行を支える重要な設備があります。架線からどのように電気を取り込んでいるのか気になる場合は、電車の電気はどこから来るのか、パンタグラフの仕組みと役割もあわせて読むと、鉄道を支える仕組みをさらに理解しやすくなります。

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